【4月16日 AFP】ウクライナでの軍事作戦に参加していたロシア黒海(Black Sea)艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ(Moskva)」が沈没したことで、ロシアの威信は大きく傷ついたが、海上戦力の低下は限定的だと識者はみている。

「モスクワ」は14日、爆発と火災に見舞われ沈没。ウクライナ側はミサイル攻撃による撃沈を主張しているが、ロシア側は弾薬の爆発が原因だったと説明している。

 ロシア軍が黒海の制海権を強く握っていることを疑う理由はこれまでなかったが、「モスクワ」沈没によりこうした見方は一変した。

 仏トゥーロン(Toulon)を拠点とする地中海戦略研究財団(FMES)の代表で元海軍将校のパスカル・オスール(Pascal Ausseur)氏はAFPに対し、「象徴的な意味での大きな損失」だと指摘。同艦は数回のミサイル攻撃に耐え、火災の封じ込めも可能なはずだったにもかかわらず、わずか12時間で沈没したと説明した。

 しかし西側諸国の専門家は、同艦が損失してもロシア軍の作戦に大きな影響はないとみている。米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、ロシア軍の巡航ミサイル攻撃能力は低下するが、「全体としてロシア軍の作戦に決定打を与える可能性は低い」との見解を示した。

 トルコが黒海につながるダーダネルス(Dardanelles)、ボスポラス(Bosphorus)両海峡での軍艦通過を禁止していることから、ロシア軍は代替艦を派遣できない状態にあり、残存艦隊の重要性は高まっている。

 ウクライナ侵攻でのロシア海軍の役割は限定的であり、「モスクワ」の損失によって大きな影響は及ばないだろうとみる識者もいる。だが外交政策調査研究所(Foreign Policy Research Institute)のマイア・オタラシュビリ(Maia Otarashvili)氏はAFPに対し、ロシアが今後、海軍により大きな役割を与える計画を見直す可能性があると指摘した。(c)AFP/Didier LAURAS