だが日本国外で成功するには何が必要なのか? 日本から飛び出して、ファッションの中心地パリで確固たる地位を築いた三宅一生(Issey Miyake)や山本耀司(Yohji Yamamoto)、川久保玲(Rei Kawakubo)の後に続くには、どうすればいいのか? 服作りに厳格な基準が設定され、「正しいやり方」を追求するあまり、創造性が二の次にされることもある国で、乗り越えなければならない障害とは何なのか?

「ウジョー」の服はすでにバルセロナ(Barcelona)やニューヨーク、ソウル(Seoul)など世界の10都市以上で販売されているが、西崎が熱望するのは海外展開の拡大だ。だが国内での成功を次なる世界レベルにまで到達させるのは容易ではない。

 ハイファッションな店が立ち並ぶ東京・表参道にある「ウジョー」のショールームで取材に応じた西崎は、礼儀正しく真面目で、つば広の黒い帽子の下からは内気で緊張している表情もうかがえた。

 米国の有名デザイナーの中には、無一文から今の成功を築いたとか、幼少期からファッションに夢中だったとかいう感動的な身の上話を語り、大衆の心をつかもうとする人が少なくない。だが西崎は、そうした個人的な話をするのは気がすすまないようだった。

 彼は自身のコレクションについて、山本の下で働いていたときに身に着けたやり方でデザインしていると語った。オープンなマインドで、特定のインスピレーションにこだわらず自由にデザインすることだという。日本のデザイナーは欧米のデザイナーよりも国際舞台で頭角を現すのが難しいかと尋ねると、西崎は「難しい質問で、むしろ私が教えて欲しいくらいだ」