【5月12日 marie claire style】フランス文化には、アール・ド・ヴィーヴィル(生きる術)という言葉が存在します。元々は、贅を凝らした貴族社会の生活空間の作り方や話し方など「術」を指していましたが、フランス革命と同時に、その習慣が一般社会にも伝わり、現代では日常を芸術的な域に昇華させようという暮らしの術という意味になりました。

 そんなアール・ド・ヴィーヴィルを代表するテーブル・アートが、家籠りの時間が続くフランスで人気を博しています。そもそも人を招待するのが大好きなフランス人。平日ディナーから日曜ブランチ、アペリティフを省略したアペロに、ティータイムと、何かと機会を見つけては、食卓を囲む時間を楽しみます。SNSで話題のワウ・ラ・ターブル ( Instagram @WawwLaTable)は、このコロナ禍にスタートしたテーブル・アートのアカウントです。「なんというテーブル!」という感嘆の声を表現した企画名で、テーブル・アートのコンテストを毎週開催しています。人気デザイナーのインディア・マダヴィ、歴史家のステファン・ベルヌと国際的なフレンチシェフのティエリー・マルクスの3人が審査員を務め、クリストフルやバカラ、ラリックなどの有名ブランドが協賛し、最も個性のある美しく、ストーリー性を大切にしたテーブルに賞が与えられます。私も何回か挑戦し、2月には晴れて2位を受賞しました。東洋の草花を愛したジョゼフィーヌ皇后をテーマにしましたが、自分の想像力を駆使して世界が広がったような、どこか旅したような気分になりました。このコンテストは多くのブランドがチェックしていて、各社のコレクションがどのように一般家庭の食卓で使用されているのか、他のブランドとどう組み合わされるのかを覗く良い機会にもなります。コンテスト以外にも、専門家によるアドバイスや、著名人が手掛ける食卓など、幅広いコンテンツで、食卓への拘りを紹介しています。配色や、キャンドルやグラスの高低など、楽しみながら勉強ができます。

 このコンテストのモットーは、「イミテーションではなく、インスピレーション」。お互いを真似し合うのではなく、あくまでも想像を膨らませ刺激し合うこと。そんなシェアする精神で、誰もが楽しめるプラットフォームとなっています。蚤の市の掘り出し物から代々伝わる銀器、高級リネンにお手頃なグラスなど、等身大のアイデアが見つかり、絶妙なバランス感覚を磨くヒントを得られます。因みに、フランス語で親しい友達を意味するコパンは、co=一緒に、pain=パンなので、パンを分け合う仲という意味です。パンデミックで中々会えない環境でも、友人たちとのいつかの再会を夢見ながら食卓作りに精を出すフランス人は、どんな時でもやはり人生を謳歌する達人なのだと感心します。

■プロフィール
大岡陽子(Yoko Ooka)
神戸生まれ、パリ育ち。幼少期の7年間をパリで過ごす。関西学院大学フランス文学科卒業。再度渡仏し、パリ政治学院(シアンス・ポ)で広報学の修士号を取得。「バカラ」「ルイ・ヴィトン」「ルイ・ロデレール」といったラグジュアリーブランドでの研修を経て、現在はパリで最も歴史のある、最高級五つ星パラスホテル「ル・ムーリス」に入社。総支配人秘書、セールスマネージャー、アーティスティック・アドバイザーを経て、現在はコミュニケーションマネージャーとしてプレスやブランディングを担当。

■関連情報
・大岡陽子 公式インスタグラム:@mademoiselleyoko
(c)marie claire /photos & text: Yoko Ooka