■性選択

 分析のため、研究チームは「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」と呼ばれる手法を用いて、ブラジル、コロンビア、チリ、メキシコ、ペルーのボランティア6630人を対象に、DNAの類似点と身体的特徴とのマッチングを行った。

 ボランティアは、50%近くが欧州系統で、40%がアメリカ先住民、6%が近代アフリカの系統だった。

 分析の結果、毛髪関連の特徴と遺伝子との未知の相関関係が全部で10種類発見された。これらの相関関係は「統計的有意性」のレベルにまで達しているという。白髪化に関わるIRF4遺伝子もこの中に含まれる。

 今回の研究では、祖先の違いによって、生涯の中で白髪化が始まる年代が異なる傾向があることが判明した。

 ルイス・リナレス教授によると、コーカソイド(白色人種)の場合、白髪化の平均年齢は30代半ばだという。また、東アジア系統では30代後半から、サハラ以南アフリカ人は40代半ばから始まるのが平均的だとしている。

 同様に、欧州系統では、20歳前に白髪化が始まると「早過ぎる」といわれるが、アジア人の場合は25歳前、アフリカ人は30歳前に始まるのが早過ぎるとされる。

 他方、論文の執筆者らによると、人類の多毛性の変化とばらつきを後押しする進化の推進力に関して考察するための新たな材料が、今回の研究によって提供されるという。

 ルイス・リナレス教授は、「巻き毛は、人類が初期に進化した高温の赤道直下地帯では特に脳を常に冷却する助けになると考えられる」と説明。同じように直毛については、人類が北や南に移動し、より寒冷な気候に適応したことに由来するのかもしれない。

 さらに、毛髪の有無それ自体も、性選択に影響を与える可能性がある。性選択では、特定の特質を有することが繁殖に有利に働くためだ。(c)AFP/Marlowe HOOD