■ 「独立した気分」

 中国では2010年の新法で、島の50年間の使用権の売却が許可されるまで、ロビンソン・クルーソー(Robinson Crusoe)となることを夢見る人たちが島を所有することはできなかった。

 施行後1年経った11年、中国東部の浙江省(Zhejiang)で同国初の「島の競売」が行われ、2万5000平方メートルの無人島を2千万元(約4億円)で購入する企業も現れた。その後、他の省でも同様の競売が開かれたが、リンさんによると、島の所有許可は個人よりも企業に与えられることが多いという。

「政府が島の個人所有者を支援する法律を作るか、または少なくとも私たちに圧力をかけないことを祈ります」とリンさんは話す。リンさんが結成した島所有者の協会のメンバーは53人で、圧倒的に男性が多い。協会のクラブハウスは広東省の省都、広州(Guangzhou)市内を流れる川に浮かぶ島にある。

 リンさんが、広東省に隣接する広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)沖にある島を購入したのは、島の個人所有を許可する法律が施行される以前の2009年で、彼は島からの立ち退きを命じられる可能性にさらされている。海に浮かぶ島の将来が心配になったリンさんは、より不安が少ないという湖に浮かぶ島も購入した。

 億万長者が百万人以上も存在する中国では、海洋に浮かぶ島を購入できる財産を持つ人も多い。しかし、法律による制限を避け、国内ではなく外国で島を購入する人々も多い。

 最近の報道では、中国人女性ウェンディ・ウェイメイ・ウー(Wendy Weimei Wu)さんが、ニュージーランド沖のスリッパー島(Slipper Island)を、滑走路と住宅付きで560万ドル(約7億円)で購入したことが伝えられた。

 中国人ITコンサルタントのグラミー・ルンさん(31)は昨年、カナダ・ノバスコシア(Nova Scotia)州の湖にある1万6000平方メートルの島を「独立する気分で」購入した。価格は50万元(約1000万円)。「個人所有の島の管理は、中国よりも他国の方が進んでいる」という。

 独ハンブルク(Hamburg)に本社を置く離島を専門とする不動産会社ウラジ・プライベート・アイランド(Hamburg)の中国担当部長、マニュエル・ブリンクシュルティ(Manuel Brinkschulte)氏は見本市で、アジアから欧州にまたがる「安息の地」を一覧にしたパンフレットを配っていた。「中国はわが社にとって、最大ではないが最も成長著しい市場だ」という。(c)AFP/Tom HANCOCK