■過去を許して未来へ

 ツツ元大主教は、「和解し、許し合い、前に進み、再び愛し合うことは、人間だけに与えられた能力である」と仮釈放決定を歓迎する意向を文書で示した。大司教はさらに、「彼の社会復帰を心から歓迎できない人も多いかもしれないが、私たちは人間、そして国家として、彼を迎え入れる決断を下した」と付け加えた。

 デコック受刑者が犯した殺人や誘拐、拷問などの罪は、許すにはあまりにも凶悪であり、同受刑者は寛大な処置に値しないと考える南アフリカ国民も多い。多くの国民がソーシャルメディアに仮釈放決定をあざける書き込みをしている。

 しかし、デコック受刑者は罪を悔やんでおり、アパルトヘイト時代に罪を犯したが罰を受けなかった多数の人間の身代わりとして有罪判決を受けた象徴的存在だと捉えている人たちもいる。

 デコック服役囚も、仮釈放が認められなかった昨年の裁判所での審理で、「私は、アパルトヘイト存続を主張し解放運動を弾圧しようとした(当時の与党)国民党(National Party)の試みの一部として罪を犯したが、南アフリカ警察(South African Police Service)の中で有罪判決を受け服役しているのは私だけだ。当時の軍の将校や1990年までに閣僚を務めた人物で訴追された者は一人もいない」と主張していた。(c)AFP/Kristen Van Schie