【4月7日 AFP】南アフリカのネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領がアパルトヘイト(人種隔離)時代に収監されていた監獄があるロベン島(Robben Island)から、風船を使って「脱出」する冒険に6日、英国在住の南アフリカ人男性が成功した。

 この男性はマット・シルバーバランス(Matt Silver-Vallance)さん(37)。マンデラ氏の名前を冠した「ネルソン・マンデラ小児病院」をヨハネスブルク(Johannesburg)に建てるための資金1000万ランド(約1億円)を集める目的でこの冒険に挑戦した。ケープタウン(Cape Town)にある小児病院で働いていたシルバーバランスさんは、7年前にテレビで宇宙飛行士を見たときにこの冒険を思いついたという。

 リハーサルは行わず、6日の朝から160個の風船にガスを入れたが、離陸前にいくつかは割れた。ウエットスーツに身を包んだシルバーバランスさんは、海面から数メートルの高さに浮かび、水を詰めた袋や、エアガン、風船を割るためのやり代わりの棒などを使って「操縦」し、約6キロ先の対岸を目指した。

 高度を調整するため、シルバーバランスさんは飛行中に35個ほどの風船を割った。陸地への着陸は危険すぎるとして、海岸から300~400メートル離れた位置にあるゴムボートに降りたシルバーバランスさんは「最高だった、信じられないよ」と話し、「こんなこと家でやっちゃだめだよ」と冗談を飛ばした。

 シルバーバランスさんによると、風船を使った同様の冒険は世界に過去12例しかなく、うち2例で死者が出たという。シルバーバランスさんは「アフリカでは初めてだと思う」と述べ、「マンデラ元大統領が負ったリスクに比べれば、私が冒したリスクなんて取るに足りないよ」と語った。肺の感染症で10日間入院していたマンデラ元大統領は、シルバーバランスさんの風船飛行の後、退院した。

 風船に詰めたヘリウムは7万ランド(約75万円)相当、風船は9万ランド(約97万円)相当で、いずれも寄付されたものだという。ロベン島は現在、島のほとんどが博物館になっている。(c)AFP