【10月14日 AFP】仏南部の静かな町で先週9日、「世界で最も古い映画館」が大々的な改装を終えて再オープンした。マルセイユ近郊のラシオタ(La Ciotat)にある「エデン座(Eden Theatre)」は、1899年に「映画の父」として知られるリュミエール兄弟が映画の原型となるシネマトグラフ(活動写真)を上映した映画館だが、1995年にいったん閉館していた。

 兄オーギュスト(Auguste Lumiere)と弟ルイ(Louis Lumiere)のリュミエール兄弟は1899年3月21日、エデン座で250人の観客を前に、2人が初めて制作した映画を上映した。上映会はそれ以前にも他の都市で行われたが、現在まで残っている映画館はエデン座だけだ。

 エデン座はその後、劇場としても使用され、イブ・モンタン(Yves Montand)ら仏有名俳優が駆け出し時代に出演したこともある。しかし1980年代には、経営者が金目当てのごろつきに殺害されたり、ファンの映画離れが進むなど苦難の時期を迎えた。やがて毎年1週間だけ、フランス語の映画を上映する映画祭の期間のみ営業を続けていたが、ついに1995年閉館した。

 ■「欧州文化首都」で開けた再生への道

 今回の大改修は、マルセイユとプロバンス地域が2013年の「欧州文化首都(Marseille-Provence European Capital of Culture)」に指定されたことで実現がかなった。地元自治体が600万ユーロ(約8億円)の改修計画を承認。薄汚れた椅子はビロード張りのソファに替えられ、外観は新たにクリームイエローに塗られ、正面入り口はモザイクタイルがあしらわれた。じゅうたん敷きだった床も、オーク(楢)材のフローリングに張り替えられた。

 今後は民間の運営でごく一般的な映画館として営業するが、わずか166席の映画館が経営面で成功するかどうかの先行きは不透明だ。映画館のファンたちは、学校教育への活用や映画祭の招致などの文化的なプロジェクトが必要だと訴えている。(c)AFP/Anne Beade