【1月31日senken h】昨年10月29日、中国・北京市において第9回「旭化成・中国ファッションデザイナークリエイティブ大賞(旭化成中国大賞)」の授賞式およびファッションショーが行われた。市場の成長とともに、ファッションへの関心も高まり、徐々に文化として根付きつつある中国。その中で旭化成は高級素材「ベンベルグ」の訴求を通じ、中国での存在感を高めつつある。

 旭化成中国大賞は、中国のファッションの高級化と、トップデザイナーの育成を目指して07年11月にスタートした。業界で活躍しているファッションデザイナーの中国トップ10から選考するハイレベルなデザイナーコンテストで、年2回、中国インターナショナルファッションウィーク(北京コレクション)の期間中に開催される。

 第9回の受賞者は、施傑(シー・ジー)氏。自身のブランド「JIE・SI」では100店のブランドショップを有する、実力派の若手デザイナーだ。授賞式当日には、旭化成せんいの「ベンベルグ」を素材とした「2012年春夏ベンベルグコレクション」のショーが行われた。「書者」と題されたこのショーでは、作品のテーマである西洋と東洋文化の融合、ベンベルグの高級感が表現され、約1000人の来場者を魅了した。また、ランウエーには「2011年旭化成キャンペーンモデル」の王詩文(ワン・シーウェン)さんも登場。凛(りん)とした存在感で施傑氏のコレクションに華を添えた。

 3月には、第10回受賞者の計文波(ジー・ウェンボ)氏によるショーも予定されている。

★施傑氏インタビュー「着る人が自然に戻れるような服を」

 今回大賞に選ばれた施傑氏は98年に自身のブランド「JIE・SI」を創立して以来、多数の受賞歴を持つ実力派若手デザイナーだ。彼の服作りは東洋文化に根ざした「自然に帰れるような服」がテーマ。洋服で人々に安心感を与えていきたいという。

■東洋文化に根ざして
―服作りのコンセプトは。
 
 今の社会は経済的には豊かになりましたが、昔にあったような自然な生き方を失ってしまいました。例えば、携帯電話はとても便利な道具ですが、それによって現代人は時間に追われ、ストレスを感じる生活を強いられています。私は、着た人がそんな現実から離れ、自然に戻れるような服作りを目指しています。私の洋服で人々の心に安らぎを与えたいと思っています。

 今回のコレクションでは、水墨画や書といった中国の文化、東洋の文化からインスピレーションを受けたデザインを表現しています。これまで、どこの国でも西洋文化が主流でしたが、だんだん東洋文化の良さが注目されつつあります。中国にルーツを持つデザイナーが海外でも活躍していますが、それも東洋人のバックグラウンドが作り出す作品が評価されているのでしょう。

 純粋だった子供時代が私の原点です。私は書道家になるのが夢でした。書道は心の奥にあるものを開放して表現するためストレスのない状態を維持できて、実際に書道家は長生きなのだそうです。今回のコレクションで淡くにじんだ墨のデザインを多数展開していますが、これも私自身が一点ずつ手描きしました。墨絵のように白と黒で表現したもの以外に、樹木の緑や土のベージュなど、自然から着想した色使いを多数出しています。伝統的なものと最新の手法をどうミックスして提案するかがポイントだと思います。

■人間と自然が一体になれる素材
―旭化成せんいの「ベンベルグ」を使ってみた感想は。

 以前にも使ったことはありましたが、今回の受賞を機にベンベルグについて勉強し、改めてその良さを実感しました。自然原料に由来しており、これを身にまとう事で人間と自然が一体になれるような気がします。長い歴史のある素材ですから、ショーで見せるという面だけでなく、人が着た時に愛着が湧くような服作りが出来ると思います。今後、私自身がこの素材をもっと知ることで、使う機会も増えると思います。

―今後の方向性は。

 既存ブランドの「JIE・SI」に加え、高級ラインの「SI JIE/JIE SI」を昨年スタートさせました。春夏物だと今までが500~2000元(1元=約12円)だったのに対し、高級ラインは1500~8000元です。このブランドで私の本当に表現したいものを追求していきたい。先に披露したパリの展示会でも反応が良く、方向性に確信を持ちました。今後2年はこのラインでプロモーションをかけ、強化していくつもりです。海外にもどんどん出て行きたい。出るならやはりパリコレクションだと思っています。パリは芸術・文化の発信地ですから。

<プロフィール>
2006年「中国トップ10デザイナー」の称号を獲得。中国国際ファッションウィーク「ベストレディースウエアデザイン賞」受賞。10年、11年パリファッションウィーク「中国当代創意展」デザイナー。(c)senken h

【関連情報】
特集:senken h 119
<旭化成 公式サイト>
第7回「旭化成・中国ファッションデザイナークリエイティブ大賞」