【10月10日 AFP】彼らは、ジョイスティックを使って兵器を動かし敵の戦闘員らを排除する――そして基地へ戻ると、米マイクロソフト(Microsoft)のXbox 360を起動し、ゲームの中の敵を倒す。

 アフガニスタンに駐留する米軍兵士のすることは、軍務中も、非番のときも、驚くほど変わらない。21歳の特技兵、タイラー・サンダスキー(Tyler Sandusky)はそう証言する。

■遠隔兵器、「敵を倒すと赤い霧」

 岩がちなアフガニスタン北東部で、サンダスキー特技兵が受け持つ任務は、昼夜を問わず遠方の標的を見つけ出すことだ。使うのは、巨大な装甲車に搭載置された高精細のビデオスクリーン。「CROWSCommon Remotely Operated Weapon Station)」と呼ばれる兵器遠隔操作システムだ。

「(画面を通して)人々を眺めているのは、かなり楽しい。すごく遠くにいるから、彼らは監視されていることに気づかないんだ。1人で操縦しているときなんか、まるでゲームみたいだよ」と、サンダスキー特技兵は実演してみせながら話した。

 スクリーンと座席右側にあるジョイスティックを使って、装甲車上部の射程6.7キロメートル超、50口径の機関銃を操作する。「敵を倒すと、赤色の霧が見えるんだ」

■戦場がゲームそっくりに、兵器メーカーの意図も

 駐留基地の兵士たちも、CROWSと人気ゲームの類似点を口にする。ジョン・ヘニントン(John Henington)軍曹は、戦場を舞台にしたゲーム・シリーズを例に挙げ、「コールオブデューティ(Call of Duty)と似ているっていうやつは多いね」と語った。「何もない日はみんな、一日中アレをプレイしてるんだよ」

 テクノロジーは、ベトナム戦争以降の米軍兵士の生活に計り知れない変化をもたらした。どれほど遠方に配属されようが、兵士はノートパソコンでテレビを見て、オンラインショッピングを楽しみ、故郷の家族や恋人ともフェイスブック(Facebook)やスカイプ(Skype)で話すことができる。

 だが、兵士たちの生活が快適になった一方で、テクノロジーによる兵器の発展には、倫理的な懸念も高まっている。

「敵の非人間化だ」と、ショーン・マッケイブ(Sean McCabe)特技兵(22)は言った。「ぼくらはテレビゲーム世代。だからCROWSをゲームのようにみなすのは簡単さ」

 米海軍兵学校で哲学を教えるディーンピーター・ベイカー(Deane-Peter Baker)教授は、CROWSとテレビゲームの類似は偶然ではないと指摘する。メーカーが意図的に、若い兵士たちになじみのあるXboxやプレイステーション(PlayStation)の操作性に似せて設計しているというのだ。

■新世代の戦争の標準、無人機

 CROWSは米兵の安全性を飛躍的に高めた。

 同じくテクノロジーを駆使した兵器で今、最も議論が活発なのは、無人機だ。米バラク・オバマ(Barack Obama)政権が、アフガニスタンやパキスタンでの国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)やタリバン(Taliban)との戦いで使用を劇的に増加させた。米シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション(New America Foundation)」によれば、2004年以降にパキスタンでは無人機による攻撃で1667人~2614人が死亡し、うち20%は民間人だという。

 模型飛行機のような電池式の小型無人機も、情報戦に活用されている。

「数年前にはSFの世界のものだった無人機は、今や戦争や対テロリズムの新たな『標準』となった」と、ロボット兵器についての著作があるピーター・シンガー(Peter Singer)氏は言う。そして、無人機の登場によって武力使用の敷居が低くなったと指摘する。

 だが米軍は、無人機の使用は高レベルの指揮官の監督下で運用されている任務に最適なツールであり、「実際に前線に兵士を送ったほうが不要な流血が増える」と主張している。(c)AFP/Rachel O'Brien

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