献血で240万人の乳児救った「黄金の腕を持つ男」死去 豪
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【3月4日 AFP】オーストラリア赤十字の献血部門ライフブラッドは、希少な抗体を含む血漿(けっしょう)の献血に協力し続けて240万人の乳児の命を救い、「黄金の腕を持つ男」と呼ばれたジェームズ・ハリソンさんが2月17日、88歳で亡くなったと明らかにした。
ハリソンさんは、64年間に1173回の献血を行った。
ハリソンさんの血漿には「抗D抗体」と呼ばれる特殊な抗体が含まれており、母親と胎児の血液型不適合により、母体で生成された抗体が胎児や新生児を攻撃することで発症する「胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)」の治療薬の製造に役立てられた。
1966年にオーストラリアで行われた抗D試験の成功を受け、ライフブラッドがこの抗体を持つ人々を捜したところ、その数年前から献血を始めていたハリソンさんが条件に適合していることが判明した。
ライフブラッドによると、ハリソンさんは2018年まで、予約を一度も欠かさず献血に協力。血漿は乳児240万人分の治療薬として使用された。
シドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、ハリソンさんは1173回の献血のうち1163回は右腕から採血し、「右腕は痛くなかった」と語っていたが、針を刺されるところは絶対に見なかったという。
娘のトレイシー・メローシップさんも、抗Dの恩恵を受けた一人だ。
「父の貴重な献血がなければ、存在しなかったかもしれない家族を父は残してくれた」とし、「父の善意のおかげで存在しているたくさんの家族について話を聞くのを父は喜んでいた」と話している。
ハリソンさんは、ニューサウスウェールズ州セントラルコーストの高齢者介護施設で、寝ている間に息を引き取ったという。(c)AFP