世界の軍事費「前例のない」増加 国際平和研
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【4月28日 AFP】2024年の世界の軍事支出は、戦争・紛争や緊張の高まりによって冷戦終結以来、最も大幅な伸びを示し、2.7兆ドル(約388兆円)に達した。特に大幅に増えたのは欧州と中東で、欧州では「前例のない」増加となった。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が28日発表した最新報告書で明らかになった。
世界の軍事支出は前年比9.4%増で、10年連続の増加となった。上位15か国すべてを含む100か国以上で、軍事予算が拡大した。
全体の支出増を牽引したのはロシアを含む欧州地域で、17%増の6930億ドル(約99.5兆円)に達した。マルタを除くすべての欧州諸国で軍事予算は増加し、「冷戦終結時の水準を超えた」とSIPRIは指摘した。
■ウクライナ紛争の影響
ウクライナ紛争の当事国、ロシアの軍事支出は38%増の1490億ドル(約21.4兆円)で、2015年との比較では倍増した。
一方、ウクライナは2.9%増の647億ドル(約9.3兆円)。ロシアの43%程度だが、ウクライナにとっては国内総生産(GDP)の34%に相当し、いずれの国よりも高い軍事費負担となっていることがうかがえる。
また、ドイツは28%増の885億ドル(約12.7兆円)で、インドを抜き世界第4位となった。
SIPRIの軍事支出および兵器生産プログラムの研究員シャオ・リャン氏は「ドイツは再統一以来初めて、中・西欧最大の支出国となった」と指摘した。
世界最大の軍事支出国である米国は、5.7%増の9970億ドル(約143兆円)に達した。これは世界全体の37%、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の66%を占める。
NATO加盟32か国はすべて増加し、全体で1.5兆ドル(約216兆円)となった。
■中東・アジア
中東でも軍事予算が急増し、全体で15%増の推定2430億ドル(約35兆円)となった。
パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルは前年比65%増の465億ドル(約6.7兆円)。SIPRIによると「1967年の六日戦争(第三次中東戦争)以来、年間で最も大幅な増加」を記録した。
対照的にイランは「地域の紛争への関与と代理勢力への支援にもかかわらず」、10%減の79億ドル(約1.1兆円)にとどまった。「イランに対する制裁の影響が支出増加能力を著しく制限した」とSIPRIは分析している。
世界第2位の軍事支出国・中国の軍事予算は、7%増の推定3140億ドル(約46兆円)と、「30年連続で増加」した。
中国は軍の近代化、サイバー戦能力の拡充、核兵器の増強に投資しており、アジア太平洋地域の軍事支出の半分を占めている。(c)AFP/Johannes LEDEL