【8月22日 東方新報】不動産の購入は中国人にとってまさに一生の一大事だ。中国で不動産は長年値上がりが続き、一般庶民にとってはとても容易に買えるものではなくなっていた。またその一方で、最近の不動産市場は各地で失速が目立ち、不動産会社の急速な経営悪化も顕在化してきた。

 このような複雑な状況の中で、中国の地方政府が不動産購入者への支援政策を打ち出し始めている。

 江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の「住房保障・房産局」の8月4日公式ウェブサイトによれば、同市は「住宅市場の平穏で健康な発展のためのさらなる最適化政策」を発表し、新築の不動産購入に対する補助金を提示した。

 河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)も、南京市より1日早く15か条の不動産調整政策を発表、そのうち3か条が青年人材や子だくさん家庭の不動産購入への補助金と不動産契約時の税制優遇に関するものだった。

 中国共産党中央政治局会議が7月24日、「不動産政策を適宜調整し最適化する」と決定し、中央政府の方針がはっきりすると、地方政府の動きも活発になった。

 8月1日江蘇省句容市(Jurong)は、8月1日、子だくさん家庭の新築不動産購入や新築「商住房(店舗兼住宅型の建物)」購入時の不動産取得税への補助金を発表、同日に四川省(Sichuan)雅安(Yaan)経済技術開発区も新築住宅購入補助金を発表した。また8月4日には江西省(Jiangxi)贛州市(Ganzhou)が購入補助金と取得税の段階的優遇を発表した。

 北京中指信息技術研究院(Beijing China Index Academy)の情報では、23年上半期に50以上の都市で補助金政策が始まっている。

 同院の陳文静(Chen Wenjing)総監は「短期的視点から見れば、需要サイドの政策としては住宅購入コストの低減と購入ハードルの引き下げの方向に向かう。また地区ごとの事情を反映した個別施策や『出生政策』と組み合わせた政策などが重要な方向性となるだろう」と分析する。

 しかし「不動産購入補助金は短期的に購入を刺激するだけの政策で、購入者の決定的な判断に影響を及ぼすほどのものではない」という声も上がっている。不動産と住宅用品などの総合的なインターネットプラットフォーム「楽居網(Leju)」が発表した「2023年住宅購入意向白書」では、税制優遇や購入補助金は、購入の意思決定への影響力は大きくないという調査結果が示されている。

「どの優遇措置があなたの住宅購入決定に影響しますか」という質問に対し、税金やローン利率引き下げが影響すると答えたのは4.81%、大きな購入補助金と答えたのは11.12%のみであったという。

 現在全体的に緩みが見える不動産市場において、不動産購入補助金はおおむね各地方の不動産規制緩和の一環として打ち出されたものに過ぎないという見方もある。

 不動産業界の総合情報サイト「58安居客房産研究院(58 Anjuke Institute)」の張波(Zhang Bo)院長は現在の補助金政策について「この政策単体では市場への影響力は限定的なものに過ぎない。その他の刺激策と組み合わせた総合力で、市場に一定の影響力を及ぼすことが可能となる」との見方を示す。(c)東方新報/AFPBB News