中国EV車、東南アジア市場シェアが7割超え
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【8月14日 東方新報】テクノロジー分野に詳しい著名な市場調査企業「カウンターポイント」(Counterpoint Technology Market Research)が7月に発表したデータによると、東南アジアの電気自動車(EV)市場では中国車の販売台数が全体の75パーセントを占め、他の競合国を圧倒している。
東南アジアは世界の自動車市場の中でも重要な地域だが、最近さらに需要の伸びが続いている。公開されたデータによれば、2022年における中国の東南アジア向け自動車輸出総額は58億米ドル(約8350億8400万円)、前年比48パーセントの増加を果たした。
過去5年間で、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の市場で中国自動車のシェアは1パーセントに満たないレベルから6パーセントを超えるまでになっている。中でもタイは東南アジア地域の最も主要な自動車製造基地で、EV車に関して言えばタイの第1四半期の販売台数は全東南アジア市場の79パーセントを占めている。
中国の「全国乗用車市場信息連席会(全国乗用車市場情報連絡会)」のデータによると、今年の1月から5月までタイに輸出された中国車の台数は6万9000台で、前年同期比140パーセントの伸びとなった。またそのうちの9割を超す約6万6000台がEV車だった。
EV車メーカーは単に中国からの輸出量を増やしているだけではなく、大金を投じてタイをはじめ東南アジア各国の市場に生産拠点を拡充しつつある。「長城汽車(Great Wall Motor)」は2020年、6億5000万米ドル(約935億8700万円)を投じてタイのラヨーン工場を改造し、タイにおける生産拠点とした。同社の欧拉好猫(Ora Funky Cat)、哈弗(Haval)H6 HEVなどのEV車種がすでに現地市場に供給されている。
また、同社は今年1月にベトナムの自動車販売会社と協定を結んだ。8月にはベトナム市場で販売を開始する。
比亜迪(BYD)も24年には海外では初めての生産工場をタイで稼働させる予定だ。年産約15万台、ASEAN市場全体に供給する計画だという。
奇瑞汽車(Chery Automobile)は7月に深セン市(Shenzhen)で開催された「中国-アセアン新興産業フォーラム」で、インドネシア、マレーシア、タイに生産工場を建設し、内燃エンジン車(ICE)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)の生産拠点とすると発表した。それぞれの車種とその優位性の相互補完を実現して、東南アジア市場で販売される全ての車種を網羅する計画だ。
吉利汽車(Geely Automobile)は100億米ドル(約1兆4398億円)を投じて、マレーシアのペラ州タンジュン・マリムに地域最大の自動車生産拠点を建設する計画だ。
注目すべきは、日本の自動車メーカーは東南アジア市場に進出して約50年、ASEAN諸国の発展と密接に結びついていることだ。自動車関連の規範や政策、サプライチェーン、ブランドネームの浸透など、あらゆる面で優位に立っている。それゆえ内燃エンジン車の時代は、日本車が圧倒的な市場占有率を誇っていた。
しかし電気自動車時代の到来に伴い、EV分野の生産経験と競争力のある製品を持つ中国企業が、今や主要な「勝ち組」になり始めている。
野村証券総合研究所のタイ国コンサルタンティング部門の山本肇(Hajime Yamamoto)シニアマネージャーは「今後10年間で、中国メーカーはタイの消費者が容易に購入できるEV車を提供して、日本車のシェアの少なくとも15パーセント以上を奪い取ることになるだろう」と予想している。
かつて中国メーカーは現地化の程度が低く、販売チェーンやサプライチェーンが不完全で、現地の市場で十分な地位と認知度が得られなかった。しかし現在、中国メーカーは積極的に現地化戦略を推進し、現地パートナーとの合弁方式などで生産コストを下げ、競争力を高めている。また投入車種も都市向けの小型車から豪華なSUVまで幅広い消費者層を網羅しようとしている。
国金証券の研究報告書では「東南アジア諸国の新エネルギー車の普及率はまだ低く、各国は新エネルギー車に有利な政策を次々に打ち出している。日系企業は長期にわたり東南アジア市場を主導してきたが、ハイブリッドやプラグインハイブリッド車種の生産が主力で、電気自動車は少ない。中国企業は、高い電動化と知能化の能力を発揮して東南アジア市場のシェア獲得を狙っている」と分析している。
しかし、そのような中国企業にも競争の圧力が高まりつつある。日本のホンダ(Honda)は23年にタイで全面電気駆動のSUVの量産を開始する。またトヨタ自動車(Toyota Motor)もタイで純EV車の生産を検討中だ。韓国の現代汽車(Hyundai Motor)はインドネシア工場のEV車IONIQ5の生産量を、従来の3倍以上の規模の月間1000台にする予定だ。
これからまた東南アジア市場でEV車の新たな競争が始まる様相だ。(c)東方新報/AFPBB News