【6月21日 東方新報】チベット仏教の聖山の一つとして知られる中国・雲南省(Yunnan)の梅里雪山(Meili Snow Mountain、6740メートル)の絶景を巡って、中国でちょっとした「炎上」騒ぎが起きている。

 中国のある旅行ブロガーが雲南省とチベット自治区(Tibet Autonomous Region)を結ぶ国道214号を走っていた時、そろそろ梅里雪山の絶景が見られると期待していると、景色を遮る形で道路脇にコンクリートの高い壁が出現した。その壁は延々と続き、有料展望台以外では絶景が眺められないようになっていた。

 このブロガーがその状況を動画に収めて動画投稿サイトに投稿したところ、瞬く間に拡散して地元紙などが取材に駆けつける騒ぎになった。

 現場の雲南省デチェン・チベット族自治州(Diqing Tibetan Autonomous Prefecture)徳欽県(Deqin)の担当者は、有料展望台に観光客を集めるために壁を建造したことを認めた上で「この地域は貧しいため、観光開発業者に展望台の運用を委託しており、その業者から利益の一部が住民にフィードバックされている」と回答した。

 しかし、この回答を巡っても「本当に住民が潤っているようにはみえない」「観光客が不快な思いをすれば、梅里雪山の評判が落ちて、地域の観光産業が衰退してしまう」などと批判が殺到した。

 梅里雪山の騒ぎに前後して、青海省(Qinghai)の絶景スポットである青海湖の有料展望所の近くに有刺鉄線が張り巡らされ、道路から湖に近づけなくなっている状況も投稿され、拡散した。似たような絶景の囲い込み問題は各地で断続的に告発されており、旅行ブロガーたちの影響力を思い知らされる。

 SNSが盛んな中国で、観光地の集客競争はますます激化している。ネガティブな投稿、口コミが増えれば、観光地の人気は落ち、ホテルなどの客単価も下がっていく。一方、人気を集めている観光地の多くは、景勝地の入場料を無料化するなど「お得感」を演出することで、ポジティブな投稿を増やし、集客増につなげている。

 こうした状況についてSNS上には、「観光地は『北風と太陽』の物語を思い出してほしい」と投稿されていた。観光客の財布のひもを緩めさせるには、コンクリートの壁で景色を遮ることではなく、無料で見せ、満足してもらった方が効果的だという意味だろう。

 ちなみに、梅里雪山は世界でも数少ない未踏峰として知られる。1991年には日中合同学術登山隊17人が遭難する事故も起きている。8000メートル級がほぼ全て登頂されたのに、6000メートル台の梅里雪山が未踏峰で残されているのは、その険しい自然環境だけではなく、美しい峰々が地元住民の信仰の対象となり、畏れられてきたこともあるという。こうした物語をSNSなどで効果的にPRした方が集客や収益につながるのではないか。

 梅里雪山をどう眺めるか。それは訪れる人それぞれの好みの問題だろう。ただ、絶景を遮るコンクリートの壁だけは撤去してほしいものである。(c)東方新報/AFPBB News