【2月3日 AFP】オーストリアの巨匠グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の大作「水蛇II(Water Serpents II)」が、3日からウィーンのベルベデーレ美術館(Belvedere Museum)に展示される。同作の国内での展示は約60年ぶり。

 ニンフ(妖精)と赤い蛇が描かれた「水蛇II」は初め、オーストリアのアートコレクターのシュタイナー(Steiner)一族が購入した。しかし、1938年のドイツによるオーストリア併合後、ナチス・ドイツ(Nazis)に略奪され、所有者は国外に逃れた。

 ベルベデーレ美術館でのクリムトの展覧会を企画したキュレーター、マルクス・フェリンゲル(Markus Fellinger)氏によると、その後、クリムトの「非嫡出子」である映画監督グスタフ・ウィッキイ(Gustav Ucicky)氏が同作を購入した。

 ウィッキイ氏の死後、その妻が1964年に同作を国内で展示したが、その後はほとんど人目に触れることがなかったという。

 だが、ウィッキイ氏の妻は2013年、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)で、サッカークラブ「ASモナコ(AS Monaco)」の会長を務めるドミトリー・リボロフレフ(Dmitry Rybolovlev)氏に1億1200万ドル(現在のレートで約144億円)で売却し、美術界を驚かせた。

 リボロフレフ氏は2年後、現在の所有者である、香港のホームアート(HomeArt)に売却した。

 ベルベデーレ美術館は、展覧会で展示するための十万ドル規模の保険料を捻出できなかったため、代わりに専門的な修復作業を申し出た。展覧会は5月29日まで。(c)AFP