【11月18日 AFP】ウクライナ北部の森の端。雨が降り、雲が低く垂れ込める中、目出し帽をかぶった兵士が、望遠鏡で数キロ先のロシア、ベラルーシとの国境を監視する。

 ウクライナ最北の拠点にはロシアの無人攻撃機も飛んでは来ない。33歳の兵士は、対戦車ミサイル「NLAW」を誇らしげに見せた。「新たな侵攻を防ぐのが主な任務だ。再びここから侵攻が始まったら、国境で敵を食い止め、これ以上進ませない準備はできている」と語った。名前は明かさなかった。

 近くにはセニキウカ(Senkivka)の検問所がある。ここで道がY字に分かれ、北西に進めばベラルーシに、北東ならロシア、南ならウクライナに続いている。

 ロシア軍の第90機甲師団は2月24日、セニキウカ検問所を通ってウクライナに侵攻した。

 4月初旬になるとロシア軍は、北部から軍を引き揚げ、東・南部に集中させた。

 ウクライナ軍はそれ以来、セニキウカの2か国との国境と、後方基地と化していたベラルーシとの全長約900キロにわたる国境で、厳重な監視を続けている。

 ベラルーシ政府は先月、国境の防衛を理由に、ロシアの兵士最大9000人と戦車170両を国内に配置すると発表した。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領は「平和を求めるなら、戦争に備えなければならない」と述べ、ウクライナがベラルーシへの「攻撃を計画している」と主張した。

 これまでのところ、ベラルーシはウクライナ侵攻に加わってはいない。

「リンクス」と呼ばれる30代の国境警備兵は、北部国境からロシア軍が再び攻めてくる可能性は「五分五分」だと思うと、4月のロシア軍撤退後に掘られた頑丈な塹壕(ざんごう)で語った。

 リンクスさんによると、秋口から敵の動きが活発化している。しかし、ウクライナ軍は防衛を強化しており、以前よりも真剣に対応していると指摘。「同じ轍(てつ)を踏まないよう、あらゆるシナリオを検討している」と強調した。

 北部の拠点から南に約30キロ離れた場所には、侵攻初日にロシア軍に占領された町ホロドニア(Gorodnia)がある。侵攻前は約2万1000人が暮らしていた。

 アンドリー・ボフダン(Andriy Bogdan)町長はAFPに対し、「ほぼ無防備だった」と話した。

「国境警備隊と軍を頼りにしている。彼らは今ここにいて、戦う備えができている」と話した。(c)AFP/Emmanuel PEUCHOT