【10月18日 CNS】中国の若者の間で流行したカラオケや人狼ゲーム、脱出ゲームに続き、最近は「劇本殺」という体験型ゲームが大人気となっている。

「マーダーミステリー」とも言われる劇本殺は、ゲーム内で起きる架空の殺人事件を巡り、参加者の中にいる犯人を突き止めるゲーム。オンラインゲームとリアル店舗があり、オンラインゲームではユーザーが無料アプリで脚本を選択した後、ロールプレーイングの流れに沿って犯人を探し当てる。リアル店舗ではテーブルトーク型と実体験型の2種類がある。1ゲームあたり2~10人が参加し、1人当たりの参加料は約100〜500元(約1774~8874円)。プレーヤーは脚本に基づいて役を振り分けられ、実体験型ではコスプレのように衣装や小道具を使い、キャラクターを演じていく。

 2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大すると、劇本殺のオンラインゲーム利用者が増え、コロナ収束後はリアル店舗の利用者が急増した。2020年に劇本殺の関連企業は3200社を超え、2021年には上半期だけで2500社近くが新たに設立された。

 生活関連サービス企業の美団(Meituan)の調査によると、リアル店舗でプレーする70%以上が30歳未満の若者で、40%以上が週に1回以上利用している。リサーチ会社の艾媒諮詢(iiMedia Research)によると、オフラインのエンターテインメントの中で、劇本殺は映画鑑賞、スポーツフィットネスに次ぐ人気となっている。

 若者が艾媒諮詢で劇本殺の魅力を語る時、最も多く使われる言葉は「体験」だ。北京大学(Peking University)3年生の章昕(Zhang Xin、仮名)さんは週末に必ず1回、劇本殺ゲームをする。「現代は誰もが社会の枠組みに自分を当てはめ、本当の自分を抑圧している面がある。劇本殺では逆に誰かの役を演じ、笑ったり泣いたりすることで本当の自分を解放できるんです」と説明する。

 蘇州大学(Soochow University)コミュニケーション学部の馬中紅(Ma Zhonghong)教授は「劇本殺ゲームの脚本にはさまざまな時代や世界の設定があり、プレーヤーが自由に想像できる余地がある。プレーヤーは別人として行動する中で現実社会の制約を一時的に取り除き、ストレスを解消できる」と分析する。

 劇本殺のリアル店舗は全国で4万店舗を超え、ケンタッキーフライドチキン(KFC)の店舗数を上回っている。今年のリアル店舗の市場規模は154億2000万元(約2737億円)に達し、利用者は941万人に上ると推計されている。 2023年には劇本殺全体の市場規模は310億元(約5502億円)に達すると予想されている。(c)CNS/JCM/AFPBB News