【10月4日 CNS】歩行者天国や文化施設など北京市内の各地でファッションショーを行った9月の「北京ファッションウィーク」では、漢民族の伝統衣装「漢服」をテーマにした衣装が登場し、多くの観客を魅了した。中国紡績無形文化遺産PR大使兼デザイナーの張義超(Zhang Yichao)さんは「2000年前にさかのぼる漢王朝の国宝の紋織物からインスピレーションを受けた。現代のデザインと組み合わせることで文化遺産を継承していきたい」と意気込みを語る。

 漢服は漢朝、唐朝、明朝などの時代に分類される。現代的なデザイン要素を取り込んでいるが、襟や帯、右衽(うじん・左側の襟を上にして交差すること)、幅広の袖、長袍(男性用の長い胴着)、馬面裙(女性用スカート)などの伝統を受け継いでいる。2021年には漢服愛好家は約689万人に達し、産業規模は100億元(約1721億円)を超える見通しだ。

 つい最近まで、漢服は普段着とは見なされていなかった。愛好家の1人、関嘉美(Guan Jiamei)さんは「漢服を着て外出すると、『変な服装』『ドラマか何かに出演するの?』などと、よく冷やかされました」と振り返る。

 漢服ファッションが広まった後も、「値段が高い」「制作期間が長い」というイメージが定着。オーダーメードの衣装が多く、1着1万元(約17万円)するものも多かったためだ。漢服ブームと共に値段も手頃になってきており、今年第1四半期では漢服愛好家の45.2%の平均購入価格は301~500元(約5181~約8606円)だった。

 漢服ブームは、地名があまり知られていなかった山東省(Shandong)曹県(Cao)を有名にした。演劇用衣装などの生産拠点だった曹県は漢服の一大産地となり、2020年初めには2000以上の漢服関連企業がひしめくようになった。漢服の伝統が残る成都市(Chengdu)、杭州市(Hangzhou)、広州市(Guangzhou)とともに「4大漢服産地」と呼ばれるようになった。

 漢服の認知度が高まるにつれ、「漢服文化祭」や「漢服国風賞」などの活動が次々と登場し、漢服が普段着として浸透してきた。その普及の過程で、「同袍(Tongpao)」というグループの存在が欠かせない。 「同袍」とは、中国最古の詩集「詩経」にある「豈曰無衣? 与子同袍(服がないのなら、1着の服を一緒に着ればいい)」という詩句が由来。戦場に向かう兵士が互いに励まし合い、勇敢で死を恐れない精神を表したものだ。漢服がまだ広く受け入れられてない時期、愛好家たちが「同志」の意味合いで「同袍」のグループを作り、インターネットを通じた交流会や講演、実際の展示会、集団で外出する企画を行い、漢服文化を広めていった。

 寧夏大学(Ningxia University)経済管理学部の馮蛟(Feng Jiao)副学部長は「漢服文化が人気を博しているのは、動画投稿プラットフォームなどのSNSやサブカルチャーを楽しむ文化が、若者の間で浸透していることも影響している。現代の若者のライフスタイルを反映していると言える」と分析している。(c)CNS/JCM/AFPBB News