【6月15日 AFP】フランスの高級シャンパンの生産者は、追跡技術のおかげで、不正取引を防ぐと同時に消費者とつながる手段を手に入れた。ラベルやコルク栓の上のキャップシールに入れられたQRコードとRFID(超小型無線 IC チップを用いた自動識別技術)タグの組み合わせで、醸造所から消費者の手に渡るまで、シャンパンの動きを1本ずつ追うことが可能になり、シャンパンに関するさまざまな情報まで提供できるようになったのだ。

 1世紀以上にわたってシャンパンのラベルだけを扱ってきた印刷会社ビレ(Billet)は3年前、IT系スタートアップ企業「トレース・ア・ワイン(TraceAWine)」に買収された。今年は、QRコードとRFIDタグ入りのラベルを年間100万枚印刷する見通しで、新しい技術を採り入れて、シャンパン業界と共に歩んできた長い歴史を生かそうと期待を寄せている。

 トレース・ア・ワイン創業者のローラン・バーンズ(Laurent Berns)氏は、「例えば、英国で探知されたボトルがロシアに渡っているなど、通常とは異なる動きを突き止められる」「すると、われわれのシステムから(シャンパン生産者である)顧客に通知が届く」と説明する。

 生産者は偽造品の心配をする必要がなくなるだけでなく、並行輸入市場や灰色市場で価格引き下げが行われないよう流通チェーンも管理できる。

 シャンパンの生産地、仏シャンパーニュ(Champagne)地方コートデブラン(Cote de Blancs)地区の中央に位置する1854年創立の醸造所「ピエール・ペテルス(Pierre Peters)」のオーナーの一人、ロドルフ・ぺテルス(Rodolphe Peters)氏は、「うちで取引しているのは、他国の輸入業者、レストラン、ワインショップのみ」だとして、「昔からの少数のなじみ客以外、個人には販売していないが、それでも2~3倍の価格で売っていた顧客がいた」と話す。だが、この追跡ラベルによって、米国で再販しようとしていた顧客を突き止め、設定された価格で売るよう警告を送ることができたという。