【6月8日 AFP】戦争の脅威をちらつかせた威嚇から、親愛の情のこもった抱擁まで、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong Un)朝鮮労働党委員長が、駆け引き上手な外交巧者ぶりを見せつけている。その背景には、新たなプレーヤーからの予期せぬアシストがある──米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領だ。

 緊張状態がピークに達するなかで突如として外交術を発揮した金氏。しかし、こうした動きについて専門家らは、過去数十年の北朝鮮の戦略と何ら変わりないと指摘する。ただ、それが外交分野にかつてないインパクトを与えているのは、トランプ氏の自発的な動きであることを説明した。

 金氏とトランプ氏は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領の仲介により、来週シンガポールで歴史的な初の米朝首脳会談を行う。

 米中央情報局(CIA)の元北朝鮮専門家で現在はワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)の研究者であるチョン・パク(Jung Pak)氏は、「金氏は最大限の圧力をかけるのがうまいだけではなく、関係項のつながりを最大限生かすことにも長けている」と話す。「域内の各国を対立させることがかなり得意」であることを(世界に)見せつけたとしながら、また「中国を米国に対する拮抗勢力の中心として(そしておそらく保険として)みている」とも述べた。

 現時点において、金氏はその外交力を全面的に展開している。米政府と使節団を行き来させ、その一方で中国や韓国とは繰り返し首脳会談を行っている。しかし、金氏が外交手腕を見せつける舞台を意図せずして提供したのは、トランプ米大統領だ。

 シンガポールでの初の米朝首脳会談は、トランプ氏の自発的な動きによって生まれた結果だ。トランプ氏は、韓国の特使団を通して受け取った金氏による首脳会談の誘いを、側近らに相談することなく受け入れた。