■「最高の組み合わせ」

 その後、トランプ大統領は突然、首脳会談の中止を表明する。すると金委員長と文大統領は早急に2度目の南北首脳会談を実施。両国間の非武装地帯(DMZ)で親しげにポーズを取って写真撮影し、対話に向けた北朝鮮の積極的な姿勢を再確認した。トランプ氏が米朝首脳会談への意志を再び表明したのはその数日後だった。

 こうした一連の流れについて、韓国国立外交院(Korea National Diplomatic Academy)のキム・ヒョンウク(Kim Hyun-wook)教授は、「文在寅、ドナルド・トランプ、金正恩という組み合わせでなかったら不可能だったのでは」と語る。「金氏は最高の組み合わせに巡り合ったといえる」

 金氏とトランプ氏がより大きな影響力を競う中、たとえ来週の米朝首脳会談が失敗に終わり、再び米国主導の圧力が強められた場合にも、金氏の慎重に画策された外交は保険として機能するだろうとアナリストらは言う。

 北朝鮮は、朝鮮半島の非核化を約束したこと以上に何ら公的な譲歩を示しておらず、一方の米政府も北朝鮮の核開発放棄を依然要求している。そもそも、「朝鮮半島の非核化」をめぐっては、外交辞令として幅広い解釈が可能だ。

 しかし、韓国のシンクタンク、アサン政策研究所(Asan Institute of Policy Studies)のコ・ミョンヒュン(Go Myong-hyun)氏は、たとえシンガポール会談が失敗に終わったとしても、金氏は即座にミサイル試射や核実験には回帰せず、むしろ「魅力攻勢」を続けるだろうと述べる。「その場合は、韓国と中国は引き続き、外交的に北朝鮮を助けることができる」 (c)AFP/Sunghee Hwang