■ポランスキーはタクシー相乗りでカンヌへ

 スキャンダルが絶えないフランス出身のロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督だが、初めてカンヌ映画祭に足を運んだのは1950年代後半。まだ映画学校の学生という身分だった。

「(フランスの)パリ(Paris)に行ったときに、いつか映画監督の聖地に行ってやると自分に誓った。私たちにとってはそれがカンヌ映画祭だった」

 ところが、その道中で空港行きのバスに乗り遅れてしまったポランスキー。そこへ、「若い女性を連れた白髪の紳士からタクシーに相乗りしないかと持ち掛けられた」という。

 この2人は、フランス人監督のアベル・ガンス(Abel Gance)氏と、アルゼンチン生まれの脚本家ネリー・カプラン(Nelly Kaplan)氏であることが判明。「当然のことながら、かしこまったよ。こちらは映画学校の学生だったから(2人が共作した)作品も熟知していた」

 このときのタクシー代は割り勘。「ガンス監督も私と同じくらい金欠だったのだろう」

 そんなポランスキー監督にとって最良の思い出は、2002年に『戦場のピアニスト(The Pianist)』がパルムドールを獲得したときのことだ。

「名前を呼ばれたときは最高にうれしかった。格別な気分だった」

■審査員長の楽しさが忘れられないデ・ニーロ

 米ハリウッド(Hollywood)映画のベテラン俳優、ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)はカンヌ映画祭に8~9回は来ているが、今でも「この映画祭の魅力やわくわくした気持ち」は消えないという。

「ある年のことは今でも思い出す。『1900年(1900)』の撮影中で、(共演した)ジェラール・ドパルデュー(Gerard Depardieu)と車でカンヌに行ったんだ。そこで(映画監督の)マーティ・スコセッシ(Martin Scorsese)にあって、『タクシードライバー(Taxi Driver)』の制作に取り掛かることになったこととか」

 2011年にデ・ニーロは、映画界での輝かしい業績を認められ、審査員長を務めている。

「審査員長を務めるのはものすごく楽しかった。またお呼びが掛からないかな。次のチャンスが巡ってくるまであと何年待てばいいんだろう」