【8月29日 AFP】イスラム教に改宗したフランス人の女性ウェンディーさん(22)は今年の夏、イスラム教徒(ムスリム)の女性向けの水着「ブルキニ」を初めて買った。以前はビーチで過ごすのに、レギンスにテニススカート、Tシャツという格好をしていたという。

「いつもかぶっているのは普通のヘッドスカーフだし、顔を隠すこともない。休暇中になぜビキニを着なければいけないのか、分からないの。理不尽だと思う」。フランス北部の街リール(Lille)で法律を学んでいるウェンディーさんは、AFPの電話インタビューでそんな胸中を明かした。

 フランスでは南部ニース(Nice)で起きた襲撃事件の後、一部のビーチでブルキニの着用が禁じられ、物議を醸している。行政訴訟の最高裁に当たる国務院は26日、南部の町が出した着用禁止について「基本的人権の侵害」だとして凍結命令を出したが、複数の自治体が今後も禁止措置を継続していく方針を示している。

 こうした「ブルキニ禁止令」に対して、ウェンディーさんらムスリムの女性からは、さらに汚名を着せられたように感じると反発する声が上がっている。

 ブルキニは頭部まで覆うスイムスーツのような水着で、近年人気が上昇。AFPの取材に答えたあるデザイナーは、ここへ来て皮膚がんの元患者などムスリム以外からも多くの注文が入るようになったと語っている。

 宗教と一般生活の分離という原則が重んじられるフランスでは、ブルキニは信心深さを誇示する服装だと見る人々がいる。だが、それを着ている人々は、単に実用的な水着として選んでいるに過ぎないと説明する。

 ウェンディーさんはブルキニをめぐる現在の論争について、相次ぐテロで高まった反イスラム感情に揺れるフランスをさらに二分化させる「ばかばかしいもの」とあきれ顔だ。