■ブルキニ以外でも罰金

 ブルキニ禁止令は混乱も招いている。ブルキニだから駄目なのか、それともビーチで全身を服などで覆うこと自体が問題なのか。

 2人の子どもの母親であるシアムさん(34)は、カンヌ(Cannes)のリゾートのビーチでレギンスとチュニック、ヘッドスカーフを着用していたら罰金を科されたとAFPに明かした。シアムさんが警察から渡された「違反切符」には、「道徳と世俗主義に従った服装」をしていないため、とその理由が記されていた。

「家族と一緒にビーチに座っていただけなのに。かぶっていたのもごく普通のヘッドスカーフよ。泳ぐつもりは全くなかったから」と警察の対応に憤りを隠さない。

 シアムさんが罰金を科された現場にいたマチルド・キュザンさんは「悲しいことに、人々は彼女に向かって『家へ帰れ』と叫び、警察を称賛する人たちもいた。彼女の娘は泣いていた」と話す。

 フランスは2010年、ムスリムの女性が顔を全て覆うベールを公共の場で着用することを、欧州で初めて禁止した。その6年前には、公立学校でのヘッドスカーフやその他の人目を引く宗教的シンボルの着用を禁じている。

 冒頭のウェンディーさんの友人で、フランス北部沿海の町ダンケルク(Dunkirk)で育ったラミアさんは、子どもの頃、母親と一緒に黒の長いワンピースを着て海へ行っていたことを覚えている。「服は濡れるし、砂もいっぱい入る。ブルキニは、それまで衣服を着たまま泳いでいたムスリムの女性の生活を楽にしただけよ」

 ラミアさんは「無駄な問題を生んでいる日和見主義な」論争に腹を立てていると言う。「原理主義者や過激主義者は、ビーチは不信心な人々が行く場所だと考えている。そもそも、彼らはトップレスの女性がたくさんいるカンヌのビーチには行かないはず」と指摘した上で、こう続けた。

「ブルキニを着る人は自分で自由に選んでそうしている。ただ休暇を楽しむためにね」(c)AFP/Marie DHUMIERES