■布商人から狙撃手に

 政府軍と反体制派によって分断されたシリア北部アレッポ(Aleppo)の反体制派掌握地区サイフ・ダウラ(Sayf al-Dawla)で、戦闘員のヤサル・ナブハン(Yasser Nabhan)さんは迷彩ズボンの右脚側を丁寧にまくり上げ、義足を見せてくれた。

 布製品の商人として成功していたナブハンさんは、内戦勃発後、反体制派の狙撃手になった。そして右脚を失ってからは、事務助手の仕事をしている。

「以前は、世界で最も歴史のある市場の一つで布を売っていた」というナブハンさんは当時、妻と4人の娘と共に暮らしていた。「私の人生の一番うるわしい日々だった」

 それから徐々に武器を手にするようになった。日中は店で働き、夜は狙撃銃を携えて政府側の民兵らを狙い撃ちした。

 2013年、アレッポ南東部で発生した激戦で、「根本的変化」を経験したという。「ハナセル(Khanasser)で政府軍と対戦した際、路肩の地雷を踏んで負傷した。人生が変わった。片脚を失い、障害を一生背負っていくことになった」

 ナブハンさんは現在、アレッポの反政府組織の広報班を率いている。家族は4か月前にトルコへ避難した。孤独を感じる反面、自由でもある。

「この気持ちをどう表現したらいいかわからない。私は自分の街を捨てることはできない。ここで私が感じる自由は、世界の他の場所では絶対に感じられないものだ」

■建設作業員からカメラマンに

 ダマスカスのサイイダ・ザイナブ(Sayyida Zeinab)地区では、ムンタザール(Muntazar)さん(25)が、他の多くのシリア人に起こったのとは異なる運命の巡り合わせについて話してくれた。

「以前はアレッポのザワラ(Zahraa)村で建設作業員として働いていたが、村が制圧されると、仕事は完全に滞ってしまった」

 手持ち無沙汰になったムンタザールさんは、前線にいる政府軍の写真を撮影し始めた。するとたちまち、政権側のメディアに起用された。「内戦は多くの人にとっておぞましい経験だ。だが私の人生は上向いた。今では建設作業員だった頃より、何倍も多く稼いでいる」