【12月6日 AFP】非常に暴力的な描写で知られる人気クライムアクションゲーム「グランド・セフト・オート(Grand Theft AutoGTA)」シリーズを連想させる連続殺人事件が、ロシアの首都モスクワ(Moscow)を震撼(しんかん)させている。被害者は警察官から銀行幹部、民族舞踊団の元ダンサーまでさまざまだが、共通しているのは車の運転中に殺害されている点だ。

 GTAは、プレーヤーがストリートギャングとなって組織の指示で犯罪を実行し、人を殺すとポイントが加算されるビデオゲーム。このゲームの名を取り「GTAギャング」と露メディアが報じているグループは、ここ数か月で15人近くを殺害したとみられる。

 深夜、モスクワ郊外の車道に金属製の鋲(びょう)を撒いて通りがかった車のタイヤをパンクさせ、止まった車の運転手を射殺して逃走するというのがその手口だ。

 事件の深刻さをうかがわせるのは、警察当局が旧ソビエト連邦の諜報機関・国家保安委員会(KGB)の後身組織、ロシア連邦保安局(FSB)と共同で捜査を行っていることだ。KGB出身のウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領も個人的に乗り出し、「この事件の本質はテロリズムだ」とウラジーミル・コロコリツェフ(Vladimir Kolokoltsev)内相に語った。

■イスラム過激派?ウクライナの報復?

 コロコリツェフ内相がプーチン大統領に報告したのは、犯行グループの一部が警察に拘束されたとの報道が流れた後だ。しかし、捜査班や警察関係者がいつになく堅く口を閉ざしていたことから、事件の謎や襲撃犯の素性をめぐって驚くような諸説がささやかれ始めた。

 政府系日刊紙ロシスカヤ・ガゼータ(Rossiiskaya Gazeta)は警察筋の話として、「GTAギャング」はアラビア語でグループを意味する「ジャマート」を名乗り、金銭目当てではなく「異教徒」を狙っていると報じた。一方、犯行グループがイスラム過激派とつながっており、シリアなどでの戦闘訓練をモスクワ周辺の道路で行っているという説も流布した。

 また、極右民族主義を掲げるロシア自由民主党(LDPR)のウラジーミル・ジリノフスキー(Vladimir Zhirinovsky)党首は、「ウクライナの破壊工作」だと主張。ウクライナの親政権派が、東部の分離独立派を支援するロシアに「報復を仕掛けている」との持論を展開した。

 各国の治安・情報機関の動きを監視している露ウェブサイト「Agentura.ru」の創設者、アンドレイ・ソルダトフ(Andrei Soldatov)氏も、事件の異様さに着目している。「ウクライナ人にイスラム過激派――メディアに扇情的な見出しが躍っている。プロパガンダに簡単に使える」