■SNSで人気を獲得する若手デザイナー

 チャイナドレスは、17世紀から1900年代初頭まで中国を支配した満族が着用した、長く、ゆるい衣装「チーパオ(qipao)」が発祥だ。この必需品は、ぴったりとしたシルエットに改造された1920年代の上海(Shanghai)で人気に火が付いた。女性らしさや洗練の象徴として、女優や知識階級に愛された。広東語では「チャンサン(cheongsam)」として知られている。共産軍が1949年に権力を掌握した後、内戦が続き、チャイナドレスは資本主義に関連付けられたものとなり人気は下落した。

 しかしチャイナドレスは、戦いに敗れ、中国本土から逃走した民族主義指導者の蒋介石(Chiang Kai-shek)が、別の政府を設立した台湾で崇拝者を得る。熱心なチャイナドレス愛好家でもあった蒋介石の魅惑的な妻、 宋美齢(Soong Mei-ling)は上海の上流社会に属しており、台湾の流行にも影響を与えた。これによって多くの女性が1970年代まで、チャイナドレスを日常着として着ることになった。

デザイナーのリ・ウェイファン(2017年8月29日撮影)。(c)AFP/SAM YEH

 大量生産された安価な服は魅力を失い始めている。そして近年高まりつつある反中国感情は、本土の文化とチャイナドレスを関連付け、若者の気をそいでいると言うデザイナーたちもいる。しかしながら25歳のリ・ウェイファン(Lee Wei-fan)は、ファンはいまだ存在すると語る。彼はデザイン仲間とともに、自分たちが参入してみたいニッチ分野を切り開くことを決心し、高齢の師匠からチャイナドレスの作り方を5年間学んだ。リーは半年前に自身のビジネスを立ち上げ、「チャイナドレスの男(Qipao Hunk)」という名前のもと、ソーシャルメディア上でファンを得た。宣伝効果を狙ったものだと、彼は赤面しながら認めた。

 彼の顧客は花嫁からビジネスウーマンまで、チャイナドレスを優雅だと解釈する人たちだ。伝統的なアジアンスタイルへの興味は高まっており、それを利用することを望んでいるとリーは語る。そして「より珍しい技能を持っている職人の競争は、もっと激しくなるだろう」と付け加えた。リンとリーのどちらも価格を明かさなかったが、ドレスメーカーの職人は生地代を含めず、8,000台湾元(約3万円)以上を請求する。