例えば、「サポートサーフェス(support surface)」は、2020年の東京五輪を前にトレーニング場所として豊洲に新設された室内ランニングスタジアムで新作を披露。デザイナーの研壁宣男(Norio Surikabe)は、この場所を会場に選んだ理由は木の梁(はり)が網状にはりめぐらされたアーチ型の天井の美しさと、オープンしたてという目新しさだと語った。

「すごく直感的に面白いなと」と研壁は語る。「渋谷や街の中ではなく、空が広いところも気分転換になっていいのかなと思った」

 バイヤーやプレス、ファッショニスタといった観客を盛り上げるために、禅的な音楽のライブ演奏や、ランウエーを明るい光で包む演出があった。花柄のシルクやブルーのレザー、くすんだローズ色のなめらかな素材をまとった「働く女性」のルーズでミニマルな装いを、日本の技術を使って披露したコレクションは美しいものだった。

 だが一つだけマイナス点があった。早春の肌寒さがスタジアム内に広がっていて、観客らはコートを着たまま震える羽目に。そんな中でも平然とランウエーを歩いていたモデルたちは称賛に値するだろう。

「少し遠かったが、ショーが素敵だったのでそのことは忘れてしまった」と、渋谷から電車で50分かけて来たという年配の男性客は語った。「とても寒かったが、かえってそれが今回のショーをよりスタイリッシュに見せていたと思う」