「肉体」と言う楽器を使って表現を続けるには、つねにそのメンテナンスも欠かさない。女性アーティストはなにかと身体面が批判に晒されがちだが「身体と向き合うことは、心と向き合うということ。太っていても、痩せていても、妊婦でも違いはない」とあくまでも精神性を重視する。自身が目標とするのは「しなやかさ」。公式インスタグラムを見ても、旬の食べ物や花を愛でるヘルシーなライフスタイルが垣間見れる。心と体のしなやかさをもって初めて、女性は美しく生きられるのだろう。

夏木マリの公式インスタグラムから垣間見ることができる「しなやか」な生き方(@mari_natsukiより)。

■ナンセンス+インテリジェンス=新たなる童話

 また身体表現とは別の『世界共通言語』として“童話”をモチーフにした創作も続けている。過去の「印象派NÉO」では「赤ずきん」や「シンデレラ」を取り上げたが、今回は「不思議の国のアリス」と「白雪姫」をテーマに、美に翻弄される人間像に迫る。夢と現実、テクノロジーとアナログといった2つの違った視点をもとにアプローチし、いっさいの装置を使わない真っ白な空間から「会話のない童話」が繰り広げられるという。

 世界中で読み継がれてきた童話を通し、いつの時代も変わらないコアの部分をあぶり出しながら、まったく新しい身体表現を目指している夏木。「私のナンセンスに、作品としてのインテリジェンスを加え、創造的にくすぐる作品に仕上げたい」とそのもくろみはユニークだ。既存のものにとらわれず「舞台上に『今』を提案し続けるのは、つねに挑戦」と言うが「今回は世界と向き合っている」と、パリ公演に向けて貪欲な姿勢を見せる。デビュー46年目のベテランとは思えない「攻め」の精神こそが、彼女を強く輝かせるのだろう。

圧倒的存在感を誇る夏木マリ。(c)HIRO KIMURA

■かっこいいオンナの年齢を重ね方

「年齢は記号」とし、還暦を「ロクマル(60)」と表現するなど、エイジングにとらわれない生き方で圧倒的な支持を受けている。だが自身も40歳を過ぎるまで年齢とうまく付き合いきれなかったという。若い頃の自分には「時間をムダにするな!」と伝えたいと笑う。

 今、自分らしく年を重ねるために必要な心構えはとにかく「自分らしく」だ。「自分らしさを発見するということは当たり前。人生半ばを過ぎると、自分らしさを作っていくということが必須」。ファッションからライフスタイル、パートナーとの関係にいたるまで、つねにアグレッシブに輝き続ける彼女はこれからも「夏木マリ」というイズムを自分の手で築いていくのだろう。

 4月にはパリ ルーヴル美術館公演鑑賞付きの特別記念ツアーも開催される。「パリで一緒にお茶しない?」と、夏木マリ本人とショッピングやアフタヌーンティーを楽しめる貴重なチャンス。つねに最新の「自分らしさ」でしなやかに進化を続ける夏木流フィロソフィーから、今こそ大人の女の魅力を学びたい。

東京、京都に続いてパリでの公演も控える。(c)HIRO KIMURA

■公演概要
・夏木マリ 印象派NÉO vol.3「不思議の国の白雪姫」
演出:夏木マリ
振付:井手茂太(イデビアン・クルー)、小㞍健太、長谷川達也(DAZZLE)、牧宗孝(東京ゲゲゲイ)
出演:Mari Natsuki Terroir(MNT/マリナツキテロワール)、川本裕子、山﨑麻衣子、ノリエ・ハマナカ、小島功義、城俊彦、鈴木竜、小関美央、長屋耕太、牟田のどか、マメ山田、野澤健、夏木マリ

■公演日程
・3月9日~12日 東京都 世田谷パブリックシアター
・4月2日 京都府 ロームシアター京都 サウスホール
・4月25日 パリ ルーヴル美術館 オーディトリアム

■関連情報
・夏木マリ公式HP: http://www.natsukirock.com/
・「不思議の国の白雪姫」特設サイト: http://inshouha-neo.com/
・夏木マリ印象派NÉO パリ ルーヴル美術館公演鑑賞付きH.I.S.特別記念ツアー:http://www.his-j.com/neo
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