センターでは3月からすでに、100人近い患者を看取ってきた。中には苦痛のために安楽死を望んだり、孤独のために心を病んでしまったりする患者もいるという。死の恐怖と孤独は、常に患者を取り巻いている。「死ぬのは怖くないが、痛みはつらい。人には必ず死が訪れるが、痛みながら死ぬのだけは遠慮したい」と話す霍さんも、一度だけ痛みに耐え切れず自殺してしまおうと考えたことがあるという。しかし、薛さんや霍さんのように、家族がずっと付き添っていたり、自由に体が動いたりする人ばかりではない。

 毎週木曜日、北京仁愛慈善基金会から4人のボランティアがホスピスを訪れる。ボランティアの1人、李倫(Li Lun)さんが、ある時、一人っ子を亡くした高齢者の病室を初めて訪ねると、「孤独とは何だか分かりますか?」と問われたという。

「僕たちがお年寄りのために何ができるのかはわかりませんが、寄り添って、話を聞いて、少しでも苦痛や孤独を紛らわせてあげられるなら」。家族や誰かがそばにいるだけで、自分の存在価値を感じることができるのかもしれない、と話す。今年9月に亡くなった大腸がんの患者は、日に日にやせ細っていき、元気もなくなってきたが、李さんが本を読み聞かせると、いつも微笑んで静かに耳を傾けていたという。

 痛みや孤独のために、話すことすらできなくなってしまう人もいるという。笑顔や笑い声は、ここでは「ぜいたく品」である。しかし、家族やボランティア、ヘルパーに囲まれ、ほんの一瞬でも笑顔になったり、心が軽くなったりする時間が増えれば、最期の時間を穏やかに過ごすことができるのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News