【12月3日 CNS】サッカー・中国スーパーリーグで昇格組の「大連英博(Dalian Yingbo F.C.)」のホーム戦は平均観客数が約6万人に達し、その熱気が話題になっている。その一方で、街の外では遼寧省(Liaoning)大連市(Dalian)が東北で初めてのGDP1兆元(約22兆485億円)都市を目指し、力強く走り続けている。

中国ではすでに27の都市がGDP1兆元を突破し、その勢いは沿海部から内陸部へと広がっている。しかし、東北地方だけはいまだ1兆元都市が生まれておらず、その「空白」を埋める存在として大連が最も有力視されている。2024年の大連のGDPは9516.9億元(約20兆9833億円)と1兆元に迫っており、2025年1〜9月も7248.2億元(約15兆9811億円)で前年同期比6.0%増と全国平均を上回る伸びを示した。大連市は「第14次五か年計画」や2035年長期目標の中で、2025年までにGDP1兆元都市入りを明確に掲げ、政府活動報告でもその方針を繰り返し示してきた。

大連が東北の中で最も1兆元に近い理由は、強固な工業基盤と港湾経済にある。工業は大連経済の中心で、2023年にはGDP成長の約6割を支えた。とりわけ石油化学は圧倒的な強みを持ち、2024年の生産額は4256億元(約9兆3838億円)に達した。世界最大級のPTA生産基地や中国最大の石油精製・化学一体型プロジェクトが集積し、グリーン石化や先端製造分野が国家レベルの産業クラスターとして認定されるなど、都市の成長を牽引する存在であり続けている。2025年1〜9月も一定規模以上の工業生産は12.8%増と、同じ副省級都市の中でも上位に入った。

港湾経済も大連の大きな柱だ。世界銀行(World Bank)とスタンダード・アンド・プアーズ(Standard and Poor'sS&P)が発表した最新の「コンテナ港パフォーマンス指数」で、大連港は世界4位となった。大連港は東北の外貿の玄関口として不可欠な存在で、外貿コンテナの98%以上、輸入原油の60%以上を処理するなど、地域の物流・貿易・金融の発展に大きく寄与している。2024年のコンテナ取扱量は500万TEUを超え、過去5年で最高となった。大連の輸出は1〜9月に1855.8億元(約4兆788億円)となり、前年同期比16.4%増の力強い伸びを示した。船舶や自動車部品、完成車などが大きく伸び、貿易環境が不安定な中でも輸出が都市経済を押し上げる要因となった。

1兆元への挑戦には既存産業だけでなく、新産業の育成も欠かせない。近年の大連では、AI計算センターの国家プロジェクト入りや、水素燃料電池を用いた軌道車両の国内初となる納入、海外資本による先端電子材料の生産開始など、新しい産業分野の動きが活発になっている。2024年には戦略性新興産業の付加価値がGDPの14%を占め、今年は15%への引き上げを目標に掲げている。

こうした動きの先に問われるのは、大連が東北全体をどのようにリードできるかという点だ。遼寧省の許昆林(Xu Kunlin)書記は、大連には東北振興のモデルとしての役割が期待されていると述べた。中国社会科学院の牛鳳瑞(Niu Fengrui)氏も、都市が自らの強みを最大限に生かし、新しい産業分野で突破を実現できれば、さらに上のステージへ進むことができると指摘する。

GDP1兆元の突破は数字以上の意味を持ち、地域全体を引き上げる力を示す象徴でもある。もし大連が1兆元都市となれば、東北にとって初めての達成となり、地域経済への信頼感を高め、外資や人材を呼び込み、沿海都市から内陸都市へ広がる産業連携を促すきっかけにもなるとみられている。ただし、東北復興には1都市だけでは十分ではなく、次に続く都市がどこになるかも今後注目される。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News