【12月2日 CNS】「本当に時間もお金も節約できる!」

これは長江デルタ地域(上海市、江蘇省<Jiangsu>、浙江省<Zhejiang>)にある多くの新エネルギー車メーカーが、口をそろえて語る実感だ。効率の高さで知られるこの地域では、新エネルギー車の「4時間産業圏」が形成されており、自動車工場が必要とする部品供給を4時間以内の移動圏で完結できる。しかし、あまり知られていないが、新エネルギー車が鉄道と海運を組み合わせた「海鉄連運」で海外へ輸送される際には、想像以上のハードルがある。その中でも企業を最も悩ませてきたのが、「陸」と「海」で輸送基準が異なる点だ。

国内鉄道輸送では、新エネルギー車は一般貨物として扱われる。しかし海運に切り替わると、突然「第9類危険品」として扱われることになる。そのため、港に到着すると海上危険物輸送の基準に合わせて改めて積み替え作業を行わなければならない。これによりコンテナの積み替え待ち時間が延び、港での滞留期間も長くなり、追加コストが静かに積み重なって企業の輸出を阻む「関門」となっていた。

こうした「痛点」こそが改革のターゲットとなった。国家発展改革委の指導のもと、上海市・江蘇省・浙江省・安徽省(Anhui)の1市3省は「長三角区域物流の質向上・効率化・コスト削減行動方案」を共同で打ち出し、長江デルタで新エネルギー車など「新三様」に分類される危険品を対象に、「一票制」「一箱制」という新たな輸送モデルを試行し、物流の質向上とコスト削減を協力して推し進めた。試行効果はすぐに現れ、従来5〜6日かかった長江デルタから港までの鉄道輸送が、現在では2〜3日に短縮され、輸送コストも15%削減された。ボトルネックが解消されれば、物流の「通」が産業の「融」に結びつき、企業はその恩恵を最も直接的に受けることになる。

「長江デルタ一体化戦略の実施には、『一体化』と『高品質』という二つのキーワードを確実に押さえ、行政の壁を取り払い、政策協調を高め、要素がより広い範囲で自由に流動できるようにすることが重要だ」と語った習近平(Xi Jinping)総書記の方針は、この地で具体的なかたちとなって現れている。上海市と合肥市(Hefei)の両都市に拠点を置く御微半導体は、長江デルタ一体化がもたらす効率性と利便性を実感している。かつては手続きが煩雑で困難だった省をまたぐ業務の行政的な壁が、いまでは域内協調による行政サービスで解消され、人材・技術・資金といった要素がスムーズに循環している。長江デルタ一体化がもたらすインフラ連結や政策メリットにより、産業チェーンの上下流の協力はさらに密になり、御微の運営コストやイノベーションコストは大きく低下した。

これは、長江デルタ一体化による高品質な発展の一端にすぎない。いま、長江デルタが描く「圏」はさらに広がり、より実質を帯びつつある。「4時間産業圏」に加えて、「30分生活圏」「1時間通勤圏」もすでに概念ではなく、数億人の生活に組み込まれている。蘇州市(Suzhou)から上海へ通勤するなら高鉄でわずか30分。「8時間高鉄周遊圏」によって、江南水郷のたおやかさから黄山の奇松(黄山に生える独特な姿の松)の雄大さまで、1日で巡ることが可能になった。

長江デルタは国土面積のわずか4%ながら、GDPの約4分の1を生み出す地域だ。協同によって壁を壊し、新たな発展の加速度を描いている。長江デルタの実践が示す道理はひとつ。地域発展の鍵は、「一隅の利益」にとらわれる発想を捨て、要素が協同によって最大限に活力を発揮できるようにすることだ。インフラの「ハード連結」から制度・規則の「ソフト連結」に至るまで、この地域は今後もさらなる可能性を生み出し(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News