【7月3日 東方新報】かつては「一騎紅塵(騎馬で砂埃を立てながら急いで届けること)」と詠われた中国南部・嶺南地方のライチも、現在では収穫から空輸、上海市到着後の最終配送まで、全行程でわずか9時間で完了するようになった。

 この夏、中国産ライチが海外のスーパーマーケットやSNSを席巻しているが、その背景には、上海の空港が整備した、世界各地と果物を結ぶ「高速通関ルート」の存在が大きい。

 最近では、チェリー、ヤマモモ、ライチなどの季節の果物が相次いで市場に出回り、米国産チェリーやニュージーランド産キウイフルーツなども大洋を越えて中国のECプラットフォームによる中国最大規模のオンラインセール「618セール」で売れ筋商品となっている。最新データによると、5月に果物シーズンが始まって以来、上海の空港では、国内向け果物の輸送量がすでに2000トンを超え、輸出入の果物も約600トンに達している。

 2024年現在、上海の空港が構築する国際航空ハブネットワークは、48か国・291都市とつながっており、そのうち51社の貨物専用航空会社が58本の国際貨物便を運航し、毎日約120便の貨物便が世界の主要な果物産地と直結している。

 中国東方航空(China Eastern Airline)の東方航空物流、中国国際貨運航空(Air China Cargo)、中国南方航空(China Southern Airlines)の南方航空物流、順豊エクスプレス(SF Holding)などが、上海の2つの国際空港の豊富な貨物機リソースや頻繁な旅客機の貨物室を活用し、果物輸送の空中ハイスピードネットワークを構築。これにより、産地で収穫された果物が目的地の店頭に並ぶまでのシームレスな連携が実現している。

 果物輸送機が着陸すると、空港と航空会社はすぐに仕分けを行い、適切な温度帯に搬送する。空港や貨物ターミナルには冷凍・冷蔵・定温などの機能を備えた冷蔵庫が設置されており、輸送車も果物の鮮度保持要件に合わせて温度を調整可能。駐機場から倉庫までの工程はシームレスにつながっている。

 空港の税関では事前に産地の企業と連携し、果物の種類に応じた検査計画を立て、検疫専門家を配置し、専用の検査室やツールキットを準備して、スムーズな検査を実施。「到着即検査・検査即通関」を実現し、安全性を確保したうえで迅速な通関が可能となっている。

 輸出される果物にも「VIP待遇」が適用されており、上海の空港では「優先受付・優先搭載・優先積載」の原則に基づいて、24時間体制でセキュリティチェックを行い、専用のグリーンレーンを開通させて果物を迅速に出発させている。

 今年、上海の空港では初めて浙江省(Zhejiang)仙居県(Xianju)のヤマモモの大量空輸に成功した。上海虹橋国際空港(Shanghai Hongqiao International Airport)から全国へ向けて発送される仙居ヤマモモは、収穫から店頭販売まで24時間以内で完結可能。これまでに累計137トンが輸送された。(c)東方新報/AFPBB News