【5⽉2⽇ Peopleʼs Daily】分子や原子などの粒子は気体ならば飛び交い、液体や固体では微小な振動をしている。温度とは粒子の飛び交う速さや粒子の振動の度合いだ。速さや振動の度合いがゼロになれば、通常の理論ではそれ以下の温度は存在しないことになる。その温度を絶対0度という。セ氏ならばマイナス273度だ。

 ヘリウムはセ氏マイナス269度で液体になり、セ氏マイナス271度では超流動ヘリウムという、さまざまな奇妙なふるまいをする状態になる。そのような絶対0度に近い極超低温を達成する装置は、多くの科学技術開発に欠かせない。中国でも大型極超低温技術と設備の需要が日増しに切迫するようになった。しかし自主開発は予想以上に難しく、大型設備は長年にわたり輸入に頼らざるを得なかった。中国科学院理化技術研究所(以下、「TIPC-CAS」)の研究チームは10年以上にわたる研究を通じて技術上の難関を突破して大型低温冷却設備を開発した。

 TIPC-CASの劉立強(Liu Liqiang)研究員は、「大型極超低温設備は、一般的なエアコンや冷蔵庫と異なり、圧力や温度、冷却レベルが多くの段階にわたり非常に複雑です」と説明した。

 TIPC-CASは2009年に大型極超低温冷却システムの開発に本格着手した。2010年10月から2014年12月にかけては、中国初のセ氏マイナス253度の液体水素温度エリアの大型低温システムを開発した。2015年4月には「液体ヘリウムから超流動ヘリウム温度域への大型極超低温冷却システムの開発」がスタートした。そして5年以上を経て、関連技術での一連の飛躍的前進に成功した。中国はこれより、同分野での国際的な先進国入りを果たした。

 しかし、試作機の開発から産業化までには大きな距離がある。科学技術の開発は多くの場合、実験室での成果達成、小規模なパイロット試験、産業化という道筋をたどる。しかしTIPC-CASは需要が差し迫っているという状況を考慮して、「研究しながら応用、応用しながら転化する」という方式を模索した。

 そしてTIPC-CASは2016年、社会資本と共同で関連技術を実用化する北京中科富海低温科技を設立した。同社の張彦奇(Zhang Yanqi)会長は「科学研究機関は技術開発に長じ、企業はプロジェクトへの転化に長じています。両者の強みが相互補完して、実用までの期間が短くなりました」と述べた。

 張氏によると、産学研の提携により同社は低温業界をけん引する企業に急成長した。そして実用向け装置をシリーズ化することで、中国が世界の低温大型冷却設備製造の分野で居場所を持てるようにした。

 超電導加速器、宇宙関連の地上試験、先進光源――。今日ではますます多くの重大プロジェクトに中国が自主開発した大型低温冷却設備が使われている。中国の大型低温冷却設備は海外の大規模科学プロジェクトにも利用されるようになった。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News