【3⽉30⽇ Peopleʼs Daily】伝統的なノロジカの帽子をかぶったオロチョン族(Oroqen)の人々がトナカイを連れて中央通りに繰り出すと、ネットユーザーから「いいね」が相次いだ。黒竜江省(Heilongjiang)ハルビン市(Harbin)はこの冬、一躍人気の観光都市になった。

 ハルビン市が観光情報の発信に力を入れたのは2023年12月下旬以降で、発信件数は前年同期の5倍以上の1000万件を超えた。そして観光ブームが発生した。元旦休暇の3日間の観光客は前年同期の4.4倍の延べ304万8000人で、観光収入は同7.9倍の59億元(約1240億円)に達した。春節(旧正月、2024年は2月10日。Lunar New Year)期間中の観光客は累計1000万人を超え、観光収入は164億2000万元(約3460億円)で、いずれも過去最高だった。

 中国ではこれまでに、重慶市(Chongqing)、湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)、山東省(Shandong)淄博市(Zibo)、四川省(Sichuan)のリタン県(Litang)でも同様の現象が発生した。

 中国伝媒大学(Communication University of China)国家広告研究院の王昕(Wang Xin)副院長によると、ある場所の魅力がソーシャルメディアで紹介されれば、その場にいない人々は「その場にいることによる体験」を望むようになる。そのような動機で現地を訪れた観光客は、「その場にいる自分」を撮影してネット投稿する。すると、それを見た人が「その場にいる体験」をしたいとやはり強く望む。この循環が「ネット人気都市」を出現させる原動力という。

 海のシルクロードの起点として知られる福建省(Fujian)泉州市(Quanzhou)では、地元の豊富な無形文化遺産を観光資源として活用している。例えば伝統的な人形劇は鑑賞するだけでなく、人形を操る体験もできる。市では夜の屋台街を増設し、各種の伝統劇の夜間公演を増やすことで、観光客にとっての夜の楽しみの幅を広げた。

 雲南省(Yunnan)大理市(Dali)は「老舗観光都市」だが、ネットの恩恵も受けている。市の新しい象徴として「コーヒー」が取り上げられたのだ。大理市を訪れる観光客は古くからの観光名所を眺めるだけでなく、さまざまな種類のコーヒーを味わうようになった。そしてその様子をネットで「宣伝」してくれるのだ。

 ネットを通じて人気が出て、観光客が増えたら、その人気を維持することで地元の長期的な発展を実現せねばならない。中国未来研究会観光分会の劉思敏(Liu Simin)副分会長は、ネット効果などで人気が急上昇すれば「その観光シーズンの焦眉の急を解決することができるかもしれません」と述べた上で、「友好的な都市の風格」を形成し、整備と公共サービスの追加を絶えず行ってこそ、ネットで得られた人気を長期的な人気に結び付けることができると指摘した。

 中山大学(Sun Yat-sen University)観光学院の黄琢瑋(Huang Zuowei)准教授は「ネット人気の出現から時間が経過しても長期的な集客力を維持するためには、現地の文化と地元の人に注目せねばなりません。なぜなら、複製できないものだからです」と述べた。黄准教授はさらに、「地元の特色を組み合わせて、多くの人が受け入れるようにして、ネット受けするのとは一味違う観光スポットを開発する必要があります」と指摘した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News