【3⽉12⽇ Peopleʼs Daily】「梁さん、どこへ行くの?」「家にお客さんが来たんで、村の中を案内するんだ」――。中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)東部アルシャン市(Arxan)の農村部にある西口村は、わずかな期間で活気づいた。「芸術の村」になったからだ。

 大きな転換点は「2023年アルシャン山村芸術シーズン」というイベントだった。いくつかの芸術大学が、村の「芸術化」に協力したのだ。協力校の一つの清華大学(Tsinghua University)美術学院の馬賽(Ma Sai)院長によると、2022年9月から同学院の延べ200人余りの教師と学生が、西口村の景色や雰囲気の調査を行い、2023年の夏休みには村民と共に創作活動を行った。

 曲がった柳の枝が縦横無尽に交錯し、魚が編み込まれている。夜にはLEDが点灯して魚が空を泳いでいるように見える。西口村柳編み伝習所の責任者である董亜麗(Dong Yali)さんは、この作品の創作に参加した一人だ。董さんは「以前は生活用品や装飾品を作ることが多かったのですが、今では柳の枝が芸術品になりました。観光客に紹介する時には達成感が特に強いです」と語った。

 西口村内に展示されている作品のそばの表示には、創作に参加した住民の名も記されている。村民は観光客に、作品の意味や「物語」を語るようになった。村は芸術によって収入を得ただけでなく、村人が生き生きとするようになった。住民が芸術作品に生気をもたらし、芸術作品が住民を活気づけることになった。

 蘇麗紅(Su Lihong)さんは、地元料理を提供する飲食店を経営している。飾られた大きなフラワーアレンジメントが店内に華やかさを添えている。蘇さんは「他の人の作品を見て私もやってみたくなりました」と説明した。蘇さんは「村はますます美しくなっています。観光客も増え、うちの店も景気が良くなりました」と喜びを示した。

 商艶(Shang Yan)さんは宿泊施設を経営している。商さんが持つTシャツは、清華大学美術学院の教師と学生がデザインしたものだ。そして商さんのTシャツには全員のサインがある。学生らは村に滞在した際に商さんの宿に宿泊した。商さんは、「彼らのデザインはとても良いと思えて、何点かコレクションしたいと思いました」と説明した。2023年の夏は宿泊客が多く、売上高は3割余り増えたという。

 西口村は中国全国の農村観光の重点村で、2023年の芸術シーズン期間中の観光客数は延べ約8000人に達し、観光収入は200万元(約4170万円)を超えたという。

 学生らも西口村を再訪することを楽しみにしている。清華大学美術学院の学生の孫倩(Sun Qian)さんは、西口村で同級生と「遊帰―飛燕」という作品を完成させた。色つきのアクリル板でツバメを作り、異郷に飛び去った燕のふるさとに対する気持ちを表現した。孫さんは西口村での創作に加わったことで、農村振興についてより深く考えるようになった。孫さんは「農村の発展に伴い、より多くの若者が燕のように帰ってくることを願っています」と語った。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News