【3⽉10⽇ Peopleʼs Daily】無人機を用いて高圧送電線の着氷をたたいて落とす。農業ドローンが地表の情報を収集して「正確な農作業」を支援する。ビル火災現場では消防ドローンが高圧水を放射して炎を制圧する。撮影現場ではドローンが急降下して高精細カメラで素晴らしい映像を記録する。中国の各界ではドローン応用の普及に伴い、「低空域経済」が注目されるようになった。

「低空域」とは多くの場合、地表面から高度1000メートルまでを指す。場合によっては高度4000メートルにまで拡張することもある。中国では、この低空域の利用が急速に進化している。

 広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)では、「エアタクシー」の運航域の拡大が続いている。坪山燕子湖コンベンションセンターからビジネス街の福田CBDまでの移動時間はかつての60分から13分への短縮だ。安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)の駱崗公園では、世界初の商業用無人操縦機の常態飛行が実現した。「地上の渋滞よ、さらば」といった日常が身近になりつつある。

 中国企業は低空域経済の新たな分野で、すでに先行している。例えば大疆創新科技(DJI)の製品は優れた飛行制御、雲台、伝送、その他自社開発の映像システムなどにより市場でシェアは7割以上を達成した。

 2023年の中国の民間用ドローン産業規模は1200億元(約2兆5100億円)を超えた。すでに世界トップであり、2025年には産業規模がさらに拡大すると予想されている。粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)デジタル経済研究院(IDEA)がこのほど発表した低空域経済白書によると、2025年までに中国国民経済に対する低空域経済の総合貢献値は3兆~5兆元(約63兆~105兆円)に達する。

 河南省(Henan)安陽市(Anyang)は「航空運動の都」を作るという戦略目標を掲げてドローン産業パークを建設した。安徽省蕪湖市(Wuhu)の航空産業パークには、完成機、無人機、エンジン、整備補修、運営などに関わる140社近い川上川下分野の企業が集結した。中国初の全域低空域開放の試行省である湖南省(Hunan)では、省全域の低空域路線97路線の飛行検証が完了した。

 同省長沙市(Changsha)にある飛行サービスステーションでは、大画面に空中のリアルタイム状況が表示されている。省内すべての低空域が179ブロックに区分されており、飛行計画ごとに飛行ルートを迅速にシミュレーションすることで、飛行の安全が確保されている。

 中国は近年、低空域経済の発展を巡り空域政策、経済政策、業界政策などの政策支援を強化し続け、全国の計画と地方ごとの模索の連動を推進している。

 2024年1月1日には「無人航空機飛行管理暫定条例」が施行された。小型無人機(ドローン)メーカーである広州億航智能技術(イーハン)の賀天星(He Tianxing)副総裁は、この無人機の活動を規範化する法律について「商業化の持続的な推進に堅固な基礎を築き、低空域経済生態の建設・整備の促進に役立つ」との見方を示した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News