■ソ連崩壊後に緊密化

 イスラエルとロシアの関係は昨年と比べても大きく変質した。

 東西冷戦(Cold War)期の大半、ソ連とイスラエルの関係は冷え切っていた。ソ連は多くのユダヤ人がイスラエルに移住するのを阻止するとともに、反シオニズムのプロパガンダを広め、特に1973年に始まった第4次中東戦争ではアラブ諸国を軍事的に支援した。

 しかし、1991年のソ連崩壊後には状況が変化。ロシアはイスラエルとより緊密な関係を深めた結果、観光が活発化し、大勢のロシア系ユダヤ人がイスラエルに移住した。

 現在、イスラエルでは旧ソ連出身者で構成されるロシア語話者の移民人口が100万人以上に上り、かなりの政治勢力を形成している。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相の政権下では、対ロシア関係がより緊密化する様相を呈していた。

 テルアビブ大学(Tel Aviv University)国家安全保障研究所(INSS、Institute for National Security Studies)の研究者である元駐ロシア・イスラエル大使のアルカディ・ミルマン(Arkady Milman)氏は、ロシアがシリア内戦に軍事介入にしたのを受け、イスラエルはシリアで親イラン武装組織を標的にした独自の空爆作戦を実施する中、ロシア政府と連携してきたと解説する。

 ミルマン氏によれば、ロシアはシリアの制空権を掌握し、事実上イスラエルの空爆を容認してきたという。

 イスラエルはシリアの軍事的な状況や、ウクライナとロシアに存在するかなりの規模のユダヤ人コミュニティーのほか、イスラエル国内のロシア系およびウクライナ系のコミュニティーに配慮し、ウクライナ侵攻に関してロシアに制裁を科さないことを選択した。こうした立場は、3度にわたる首相交代を経ても堅持されてきた。