【12月25日 CGTN Japanese】中国浙江大学の研究チームはホッキョクグマの毛の構造を模倣して、エアロゲルを密封した超保温人工繊維を作製しました。この素材は保温性、軽量薄型、耐久性といった特徴を備えています。この研究成果に関する論文は22日、科学学術誌「サイエンス」に掲載されました。

 この研究成果は、浙江大学の化学工学生物工学学院の柏浩教授と同大学の高分子科学工学学部の高微微准教授が率いる研究チームによるものです。

 柏教授は、「ホッキョクグマは保温性の高い毛で、氷点下40度の厳寒に対応している。ホッキョクグマの毛は中空構造で、中には大量の『静止した』空気が密封されており、毛の1本1本に殻があることが分かった。電子顕微鏡で見ると、この殻の厚さはおよそ20マイクロメートルで、毛の直径のおよそ4分の1に相当する」と説明しました。

 研究チームはこの発見に基づき、約6年をかけて、新型の「コア+殻」構造の繊維を作りました。繊維の中心部は高分子エアロゲルと呼ばれる空気を密封する構造で、内部には直径10〜30 マイクロメートル程度の細長い空間が、同じ向きで分布しています。小さな空間はまるで空気を保管する倉庫のようです。繊維の表面は、内部のエアロゲルを包み込むTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)で覆われています。

 柏教授によると、「中核部が超強力な保温を実現する。繊維内部の小さな穴の方向と大きさの効能によって、赤外線エネルギーの放射を閉じ込め、熱の流出を防ぐことが期待できる。一方で『殻』はその強じん性と耐久力により、繊維に良好な力学的な支えを提供し、耐摩耗性、耐変形性、耐水洗性を付与する」とのことです。

 研究チームは保温効果を検証するために、初期温度を同一にしたダウンジャケット、ウールセーター、コットンニット、「ホッキョクグマセーター」を着用してセ氏氷点下20度の恒温冷凍室に入り、それぞれの保温効果を試しました。この実験では、服の表面温度の上昇が少ないほど、人体の熱の流出が少なく、服の保温性能が良いことを意味します。

 数分後にはコットンニットの表面温度はセ氏10.8度、ダウンジャケットはセ氏3.8度にまで上昇しました。一方で、厚さがウールセーター程度でダウンジャケットの3分の1から5分の1の厚さしかない「ホッキョクグマセーター」の表面温度はわずかセ氏3.5度にまでしか上昇していないことが分かったとのことです。(c)CGTN Japanese/AFPBB News