【11月21日 AFP】イスラエル人実業家が関係する船舶を拿捕(だほ)したイエメンの反政府勢力フーシ派(Huthi)は20日、イスラエルの船舶は「正当な標的」だと警告した。フーシ派はイスラム組織ハマス(Hamas)を支持しており、同派による今回の船舶拿捕は、イスラエルとハマスの衝突に新たな局面をもたらしている。

 19日に紅海(Red Sea)で拿捕されたのは、日本郵船(NYK Line)が運航するバハマ船籍の自動車運搬船「ギャラクシー・リーダー(Galaxy Leader)」で、さまざまな国籍の乗組員25人が乗っている。

 ハマスを支持し、イランおよびその同盟国や周辺組織から成る「抵抗の枢軸」の一員を自称するフーシ派は、イスラエルの海運を標的にすると数日前から予告していた。イスラエルに対し、ドローン(無人機)やミサイルによる攻撃も仕掛けている。

 フーシ派系テレビ「マシラー(Al-Massirah)」に対し同派幹部は20日、「イスラエルの船舶は、どこであろうとわれわれの正当な標的だ…われわれは行動を起こすことをためらいはしない」と明言した。

 海上警備会社アンブリー(Ambrey)によると、拿捕された船のグループオーナーとして登録されているのは英企業レイ・カー・キャリアーズ(Ray Car Carriers)だが、その親会社の所有者はイスラエル人実業家アブラハム・ウンガー(Abraham Ungar)氏だとされる。

 フーシ派は20日、拿捕の様子を捉えたとする動画を公開。覆面をした武装集団がヘリコプターから移動中の船に飛び乗り、乗組員に銃を突きつける様子が映っていた。船内にはパレスチナ旗とイエメン国旗が掲げられていた。AFPではこの映像の真偽を独自に確認できていない。

 フーシ派の広報を担当するムハンマド・アブドル・サラム(Mohammed Abdul Salam)氏は拿捕当日、X(旧ツイッター)に「始まりにすぎない」と投稿。イスラエルがガザ攻撃を停止するまで、海上攻撃を継続すると宣言した。

 イスラエル軍は今回の拿捕を「世界的に重大な影響を及ぼす事件」だと非難。米軍関係者は「国際法の明白な違反」だと述べた。

 日本郵船は、情報収集と乗組員の安全確保のために対策本部を立ち上げたと発表した。

 また上川陽子(Yoko Kamikawa)外相はイスラエルと意思疎通を図りつつ、フーシ派へ直接接触を試みていると説明。さらに、サウジアラビア、オマーン、イランなど周辺の関係諸国に対し、「フーシ派に船舶や船員の早期釈放を強く求めるよう働き掛けを行っている」と述べた。(c)AF