【11月16日 東方新報】中国・清華大学(Tsinghua University)の科学者たちがこのほど、全アナログ光電子チップを開発した。国営新華社通信の報道によると、このチップはコンピュータ・ビジョンのタスクで優れた性能を発揮し、現在のチップに比べて高速処理と高いエネルギー効率を実現する。

 この研究成果は、アナログ・デジタル変換に頼る従来技術に代わるもので、学術誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された。

 アナログ信号とデジタル信号は、情報を伝達する2種類の信号である。新華社によると、アナログ信号は画像を形成する光線のように連続的に変化するが、デジタル信号は2進数のように非連続的である。

 画像認識や物体検出のような視覚ベースのコンピューティング・タスクでは、環境からの信号はアナログであり、AIニューラルネットワーク(データセットのパターンや関係を認識するように訓練されたシステム)で処理するためにデジタル信号に変換する必要がある。しかし、アナログからデジタルへの変換には時間とエネルギーがかかり、ニューラルネットワークのパフォーマンスの速度と効率に限界がある。アナログの光信号を使用するフォトニック・コンピューティングは、この問題に対処するための最も有望なアプローチの一つである、と報告書は述べている。

 この新しい研究で研究者たちは、光子の形をした光と電流に含まれる電子の両方の利点を、すべてアナログ的な方法で利用するため統合型光電子プロセッサーを設計した。この成果は、「電子と光のコンピューティングを組み合わせた全アナログ・チップ(ACCEL)」と呼ばれている。

「われわれは、光と電気が持つ利点を全アナログ信号の下で最大限に引き出し、アナログからデジタルへの変換の欠点を回避し、消費電力と速度のボトルネックを解消しました」と、清華大学研究チームの方璐(Fang Lu)氏は語った。

 テストの結果、ACCELはデジタル・ニューラル・ネットワークに匹敵する精度で物体を認識・分類できることが分かった。さらに、日常生活のさまざまなシーンの高解像度画像を、最高級グラフィック処理装置(GPU)の3000倍以上の速さで、400万分の1のエネルギー消費で分類することができる。

 清華大学情報科学技術学院の戴瓊海(Dai Qionghai)院長は報告書の中で、ACCELは将来、無人システム、工業検査、大規模人工知能モデルなどの分野に応用される可能性があると述べている。

 しかし現時点では、特定のコンピューティング機能のための光-電子統合の原理に基づいたプロトタイプサンプルを開発したに過ぎない。これは、このチップがまだ試作段階であり、実用化には至っていないことを示している。広範な実世界アプリケーションに対応する汎用機能を備えたインテリジェント・ビジュアル・コンピューティング・チップを開発するためには、さらなる研究開発が急務である、と戴院長は言う。

「この研究のブレークスルーは、フォトリソグラフィ装置への依存を減らす可能性も示している」と、匿名希望の業界アナリストは11月5日に中国共産党機関紙の人民日報(People's Daily)系の環球時報(Global Times)に語った。(c)東方新報/AFPBB News