【10月20日 東方新報】中国大陸を東西にする横断する長江(揚子江、Yangtze River)では長年にわたり、環境保護のため魚の放流活動が続いている。中でも、絶滅危惧種で「水中のパンダ」と言われるカラチョウザメは38年間連続で700万匹の稚魚が放流されている。しかし、その生息数が増えたという話題は聞かないため、中国メディアは「700万匹の稚魚はどこへ消えたのか?」と報じている。

 中国チョウザメとも中華チョウザメとも言われるカラチョウザメは、恐竜が生息していたジュラ紀に亜種の化石が見つかっており、最古の生物の一つとされる。成魚になると体長0.4~1.2メートル、体重50~260キロにおよび、最大5メートルに成長する個体もある。長江最大の魚類で「長江の魚王」とも呼ばれる。肉食性で主に水底を移動し、小さな生物や動きの遅い生物を捕食する。

 長きにわたり放流してきたカラチョウザメだが、人工の環境での繁殖が難しく、生まれて間もないごく小さな稚魚を放っていた。このため、長江で成長できた稚魚はほとんどいなかったとみられる。皮肉な見方をすれば、わざわざ他の魚の「エサ」を長年、放流していた形となった。

 近年は繁殖技術の進歩により、カラチョウザメの稚魚を20センチにまで成長させてから放流できるようになった。専門家は「生存できるレベルの稚魚を放流できるようになったのは、ここ数年。それでも長江でカラチョウザメの自然繁殖はこの5年間、確認されていない」と指摘する。

 カラチョウザメはいったん海に出て十数年生息した後、川をさかのぼって産卵を開始する。このため、「水中のパンダ」が自然繁殖するまで、もうしばらくの時間を要するという。

 長江では魚類の乱獲や環境汚染が長年問題となっている。このため中国政府は2021年1月1日から、長江流域の重点水域で10年間の禁漁を実施。実質は全面的な禁漁措置で、30万人の漁師に転職を促す大胆な措置を取った。3年近くが経過し、浅瀬でも魚が姿を現し、川の水が黒く染まるほど魚が活動するようになった。あと何年かすれば、大海を泳いでいるであろう「長江の魚王」がその大きな体を長江で見せる時が来るかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News