【10月10日 CNS】中国・杭州市(Hangzhou)で第19回アジア競技大会(19th Asian GamesAsiad)が開催されているころ、西湖の近くにある百年の老舗レストラン「楼外楼」は多くの外国人観光客を迎えている。レストランのスタッフによると、多くの食客が、武侠小説(武術に長け、義理を重んじる人びとを主人公とした小説)に登場する美味しい料理である「叫化鶏」を味わいたいと言っているという。

 香港の小説家である金庸(Jin Yong)氏の武侠小説『射鵰英雄伝(英題:The Legend of the Condor Heroes)』では、丐幇(かいほう)幇主の洪七公が主人公の郭靖に武術を教えてもらうための「食での誘惑」に、料理の達人、恋人の黄蓉が最初に出した料理こそが、江南(長江以南の地区)の歴史的な名物料理「叫化鶏」だった。

 楼外楼レストランの総料理長、高征鋼(Gao Zhenggang)氏によると、「叫化鶏」は伝説によれば、叫花子(乞食者<ほかひひと>)によって発明されたとされている。焼き芋のように鶏を調理する方法で、泥で鶏を包み込み、篝火の中に入れて薪で焼く。泥が乾いて鶏が焼け、泥の殻を剥がすと、鶏の羽も一緒に剥がれ落ち、新鮮な鶏肉が現れる。

「叫化鶏の調理工程は非常に手間がかかるので、完成には少なくとも5時間はかかる」と、高氏は語った。田舎から始まったものの、楼外楼レストランでは現在、叫化鶏の調理は食材の選択から始まり、切り分け、漬け込み、包み込み、泥塗り、蒸し焼きを経て、最後に食卓に運ばれるまで、各工程は非常に丁寧に行われる。

「叫化鶏は包み焼きという非常に古い調理法を用いており、原材料をより多く保持し、口当たりが柔らかく、香りがより豊かになる」と、世界中国料理連合会国際飲食文化研究会の委員、浙江観光職業学院(Tourism College of Zhejiang)料理学院の教授、何宏(He Hong)氏は記者に話し、「叫化鶏が今日まで伝承されてきたことから、中国人の飲食に対する知恵が見て取れる。それはまさに包み焼き調理法の『生きた化石』と言える」と続けた。

 近年、杭州では国際的な祭典が次々と開催されている。料理人のチームは伝統的な叫化鶏に国際化した革新を施し、骨を取り除いた地鶏と牛肉を組み合わせ、国際的に通用した焼き方で、鶏の鮮烈さ、荷の趣、牛肉の豊かさを最大限に融けこませ発売した「杭州荷香鶏」という新メニューが大変好評を博している。

 近年では、叫化鶏は多くの外国人「ファン」の家庭のキッチンにも「飛んで」きた。一部のソーシャルメディアやショート動画プラットフォームでは、外国人ブロガーによる自家製の叫化鶏の投稿をよく見かける。その中には、アルミホイルで包んだものや、セメントで包んだものもある。(c)CNS/JCM/AFPBB News