【9月26日 東方新報】最近まで山あいの経済的後進地域だった中国西部・陝西省(Shaanxi)安康市(Ankang)が、ぬいぐるみの一大生産地として発展を遂げている。中国玩具・ベビー子ども用品協会から「中国ぬいぐるみ産業の新たな都」の称号を贈られた。

 パンダをモチーフにして人気となった北京冬季五輪のマスコット「氷墩墩(Bing Dwen Dwen、ビンドゥンドゥン)」も、多くが安康市で作られた。9月23日から10月8日まで行われる杭州アジア大会のマスコット「琮琮(Cong Cong)」「蓮蓮(Lian Lian)」「宸宸(Chen Chen)」の製造も手がけている。

 安康市ではぬいぐるみ工場の誘致や投資に力を入れ、2017年末から急速に発展した。労働集約型のぬいぐるみ産業は、人件費がコストの多くを占める。人件費が高騰している沿岸部や都市部のぬいぐるみ工場が、安康市に拠点を移すようになった。

 2022年末で安康市のぬいぐるみ企業・工場は826社、従業員は1万8000人、生産額は51億6700万元(約1049億3144万円)。ディズニー(Disney)の工場もある。日本、米国など世界80か国に輸出しており、中国第4位のぬいぐるみ生産拠点となっている。

 工場で働く多くは女性。恒安玩具有限公司の女性経営者、李建梅(Li Jianmei)さんは「地元の女性はかつて、自宅で子どもやお年寄りの世話をしており、外で働くことがほとんどありませんでした。今では工場で働いて家計の収入を増やすことできます。自分たちの都合で働きやすいよう、フレックス勤務も導入しています」と話す。熟練工の月給は6000~7000元(約12万1848~14万2156円)で、1万元(約20万3080円)を超える従業員もいるという。

 陽坤玩具製品有限公司は、工場に幼稚園や高齢者施設を併設している。袁見(Yuan Jian)総経理は「従業員の育児や介護の負担を軽減し、安心して働ける環境を整備しています」と説明する。

 安康市では、各工場で作られているぬいぐるみを集めて展示する施設があり、観光客が訪れてSNSに投稿する「映える」スポットにもなっている。

 わずか5、6年ほどで「ぬいぐるみの新都」になった安康市は、内陸の地方都市が発展するモデルとなっている。(c)東方新報/AFPBB News