【8月13日 AFP】英国の首都ロンドンで、19世紀に建設された地下の巨大な下水道システム改善プロジェクトが進められている。

 旧式のレンガ造りの下水道は、1858年夏の高い気温とテムズ川への下水流入により、街全体が悪臭に包まれた「大悪臭」を受けて建設された。総工費43億ポンド(約7900億円)の改良工事には、過去7年間で数千人のエンジニアや建設作業員が従事してきた。

 ロンドンの人口は、下水道システムが整備された当時の約400万人から、現在は約900万人に増加。容量不足のため、降雨時などには未処理の下水がテムズ川に流れ込む状況となってしまっていた。

 下水道システム改善プロジェクト「テムズ・タイドウェイ・トンネル(Thames Tideway Tunnel)」を進める建設会社タイドウェイ(Tideway)のテーラー・ゲール(Taylor Geall)氏は、「現在、年間平均4000万トンの下水が未処理のままテムズ川に流入している」と説明し、「問題は容量だ」と指摘した。

 新たな下水道は、曲がりくねるテムズ川に沿う形で直径7.2メートルのトンネルが約25キロにわたって東西に伸びる。

 運用が開始されると、現在の下水道の容量を超えた場合でも下水は新たに設置されたトンネルに誘導される仕組みとなっており、テムズ川にそのまま流れ込むことなない。

 掘削作業は昨年完了した。2024年に試験的に稼働し、25年までに運用が正式に開始される予定だ。

 新たなシステムで「(テムズ川への)流入を95%防ぐ」とゲール氏は話す。

 その一方で、「完成しても見た目にはあまり変わらず、テムズ川はこれまでと同じように濁ったままだろう。ただ、環境中の魚類や海生哺乳類、鳥類にとってはより生息しやすくなる。川を利用するボート競技団体にとってもより安全になる」と説明した。(c)AFP/Helen ROWE