【12月23日 東方新報】七輪(しちりん)を使ってお茶をわかして飲み、仲間で会話を楽しむ。そう聞くと「お年寄りの集い?」というイメージだが、中国の若者の間で「囲炉煮茶(七輪を囲んでお茶をわかす)」が大ブレークしている。

 冬のこの寒い時期、事前に仕入れた七輪や茶器を持って郊外に出かけたり、店先の路上の席に座ったり。七輪でサツマイモやトウモロコシ、ミカンなども焼きながら、ゆったりほっこりと会話を楽しむのが新しい社交スタイルとなっている。インターネットのショッピングサイトでは七輪セットが数多く売られている。中国各地にある茶館でも次々と七輪を導入。2~4人でお茶、軽食、茶菓子を楽しむ298~398元(約5842~7803円)程度のコースを提供している。

 中国の若者たちはSNSに「映える」写真や動画を投稿するのが大好きで、常に新しいテーマを探している。「囲炉煮茶」はそこにぴったりとハマったようで、関連動画はSNSで総計16億回以上も再生されている。

 また、近年は中国の伝統文化を取り入れた「国潮」ファッションがはやっている。かつては中国も欧米ブランド信仰が強かったが、国産ブランドの品質が向上したことと、経済成長により「生まれた時から豊か」な若者は自国の文化に誇りを感じている。コーヒーやコーラーからお茶を好むようになったのも、「国潮」スタイルの一環と言える。今年の夏に大ヒットした時代劇ドラマ『夢華録(英題:A Dream of Splendor)』で、ヒロインが優雅に茶を入れる姿が人気となったのも大きい。街角では、コスプレのような古風な衣装「漢服」をまとって七輪でお茶をたしなむ若者たちもいる。

 さらに中国ではコロナ禍が始まった2020年以降、都会の「密」を避けた屋外レジャーが人気となっている。まず空前のキャンプブームが始まり、今年の夏はパドルボートやフライングディスクが流行。野外や屋外でわざわざ七輪を囲むのも、その流れをくんでいると言える。

 南京市(Nanjing)の20代女性、王(Wang)さんは「七輪でお茶をわかしながら友達とおしゃべりしていると、スローライフを満喫している気分になります。仕事の疲れが取れるし、スマホでチャットするより楽しい」と話す。中国では「定時退社」が当たり前だった時代から最近は残業も日常的となり、激しい競争も続く。収入は増えたが生活に疲れることも多い若者にとって、七輪を囲んでゆっくりお茶を飲む時間は、自分を取り戻すひとときなのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News