【9月24日 東方新報】中国の企業では「団建(チームビルディング)」と呼ばれる習慣がある。一種の社員研修で週末を使うことが多いが、若い社員からは「内容に意味がない」「サービス残業」という批判も高まっている。

 インターネット企業に昨年就職した李叢斌(Li Congbin)さんは最近、「アイスブレーキング(氷を溶かす=仲間と打ち解ける)トーク」という団建を体験した。「王様ゲーム」のような形式で、指名された社員は「好きな人は誰?」といった質問など何でも答えなければならない。プライベートな質問にあまり答えなかった李さんは後日、人事部に呼び出され、「あなたは内向的すぎる。もっと自分をさらけ出さないと同僚の輪に入れない」と「指導」を受けた。李さんは「自分のプライバシーを暴露することが『氷を割る』唯一の方法なのでしょうか?」と怒りが収まらない。

 張皓文(Zhang Haowen)さんが勤務する外資系企業では、一つのプロジェクトが終了するたびに週末に1泊2日の「団建旅行」をする。費用は会社持ちで社員旅行のような内容だが、「みんな表面的には楽しいふりをしているけど、内心は嫌がっていま。テーマパークに行った場合の各施設の入場料とか食事代とか、自己負担も結構ある。何より週末ぐらい自由にさせてほしい。団建などしなくても、日ごろちゃんと同僚とコミュニケーションを図っていますよ」とぼやく。営業マンの劉丹寧(Liu Danning)さんが勤める企業では軍隊式の団建をしている。劉さんは「まあ、集団で規律行動をすれば一体感は高まりますが、『成功するぞ!』と言ったスローガンを叫ばされるのは恥ずかしいですね」と打ち明ける。昨年11月には遼寧省(Liaoning)瀋陽市(Shenyang)で、土曜の夜に最低気温マイナス15度の山頂に社員を登らせる団建が行われ、ニュースに取り上げられた。

 グループビルディングはもともと欧米で始まったもので、「ビジネスに成功するためには、メンバーが互いの特性を知り、1人1人が最大限のパフォーマンスを発揮する必要がある」という発想に基づく。職場で数組のチームに分かれ、30枚程度のA4用紙を切ったり折ったりして塔を作る「ペーパータワー作り競争」などが代表例で、仲間同士で戦略や分担を話し合い、チーム一丸となって実践する意義をゲーム形式で楽しく体験する形が多い。だが、中国企業では社員が好まない形の団建が少なくない。

 ある企業の社内調査では、1990年代生まれで「団建は必要」と答えた社員は2割、2000年代生まれの社員ではわずか1割だった。中国のインターネットでは、「団建・七つの大罪」という書き込みもあり、①社員の休息を奪う②リーダーの好みで内容が決まる③社員の意向を無視する④全体の流れを1人がリードし、社員に参加意識が生まれない⑤社員にさまざまな強制をする⑥低俗な内容やセクハラなど不快感がある⑦社員が費用を自己負担する-と問題点を並べた。中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」で「団建はサービス残業ではないか?」というトピックスが上がると、閲覧回数は2億回を超え、1万4000件もの書き込みがあった。

 南開大学(Nankai University)商学院の劉俊振(Liu Junzhen)准教授は「団建に必要な大前提は参加者へのリスペクトだ。社員の人格、プライバシー、個性を尊重し、何が得られるかを明確にしなければいけない」と指摘。中国の労働法では残業には通常の賃金の150%以上、休日出勤をして代休を得られない場合は賃金の100%以上を支払うと定められている。劉准教授は「団建の法的位置付けを確認し、社員の休息を確保することが重要」と提起している。(c)東方新報/AFPBB News