【4月18日 東方新報】中国人が見た目で最も気にするのが身長だ。中国語では身長を「身高」と言うように、背が高いことが一つのステータスになっている。「背が高くなる」というホルモン剤やサプリ、健康器具などが多数売られているが、専門家は「ほとんど根拠のないものばかり」と指摘している。

 中国国務院報道弁公室が昨年12月に発表した「中国の栄養と慢性疾患リポート2020」によると、18~44歳の男性の平均身長は169.7センチ、女性は158センチで、2015年と比較してそれぞれ1.2センチ、0.8センチ増加した。日本では2018年国民健康・栄養調査によると、20歳以上の男性の平均身長は168センチ、女性は154.5センチ。これは高齢世代を含んだ数値なので、日中間で大きな差は無い。

 日本では「最近、太ってしまってねえ」と体重の話題は上りやすいが、身長についてはあまり話題にならない。しかし、中国は逆だ。婚活サイトを見ると、「身長174センチ以上希望」とたいてい背の高さの条件がある。逆に体重に関する希望はほとんどない。中国では太った男性は「頼りがいがある」とプラスの印象があるぐらいだ。中国人女性と話していても、「私は結婚相手に条件をつけないが、自分より背が低い男性とだけは絶対、結婚しない」と断言する人は多い。女性も背が高いことはプラスで、中国の人気女優はたいてい背が高い。身長が175センチあり、背の高さを気にしている日本人女性が中国に留学すると、「美しい」「非常に魅力的だ」とモテまくったエピソードも聞く。

 求人広告でも、事務職なのに「男173センチ以上、女165センチ」と条件をつけたり、身長の差で給料が違ったりするものがある。日本でかつて「人は見た目が9割」という本がヒットしたが、まるで「人は身長が9割」と言うほどのこだわりだ。

 こんな身長狂騒曲を背景に、小さな子どもに成長ホルモン剤を与える親も多い。2013年の成長ホルモン市場は約12億元(約199億円)だったが、2020年は推計で約77億元(約1283億円)に及ぶ。インターネットでは「さよなら低身長」「15センチ背が伸びた」「長い脚が手に入る」と宣伝したカルシウム錠剤や健康ストレッチャーなどがめじろ押し。「国家食品衛生認証」や「薬物管理局認証」と表示した「背が伸びる薬」もあるが、根拠が不明確なものが多いのが実情だ。

 北京にある中日友好病院成長発育クリニックの張知新(Zhang Zhixin)主任医師は「うちの子は小学生の時は他の生徒より早く背が伸びたのに、どうして中学から伸びなくなったんでしょう?」「うちの子はまだ背が伸びますか?」という相談を多く受ける。張医師は「子どもに無理に成長を促そうとすると、幼いうちに性器が発達したり生理が来たりする弊害がある。花に早くから水をやりすぎると小さいうちに咲いて枯れてしまうのと同じ」と警鐘を鳴らす。中国メディアも「身長の高さは遺伝子によるところが大きい。それでも背を伸ばしたいなら、ホルモン剤より、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度なスポーツ、ストレスをためない生活環境こそが重要」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News