【4月16日 東方新報】中国で有名ブランド化粧品のサンプルや試供品が単独の商品として人気となっている。「複数の化粧品を割安で試せる」と若い女性を中心に需要は高いが、有名ブランドは「サンプルの販売を許可していない」と反発。サンプル自体が偽物の可能性もあり、物議を醸している。

 中国のネットショップのサイトで「化粧品 サンプル」と検索すると、 SK-II(エスケーツー)のアイクリーム2.5グラムが85元(約1423円)、アクアマリンエッセンスクリームが3.5ミリリットルで125元(約2093円)など、有名ブランドのサンプル商品が数多く販売されている。正規商品と同じ分量を買ったとしても、価格は半分ほどだ。ロレアル(L'Oreal)、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)などあらゆるブランドのサンプルがそろっている。

 ネットショッピングが主流となった中国ではリアル店舗の衰退が著しい中、一部の化粧品小売店舗は盛況だ。SNS映えするカラフルな内装が特徴の「THE COLORIST(調色師)」、倉庫型店舗の「HARMAY(話梅)」、中国の伝統要素を盛り込んだブランドを集めた「WOW COLOUR」などが若い女性のハートをつかんでいるが、人気の大きな要因がサンプルの販売だ。パッケージに「非売品」「贈答用」と印字された品物がスーパーのお菓子のように山積みとなっている。客が買い求める理由は「月収1万元(約16万7445円)未満の私が正規の高額化粧品を買うのは、かなりキビしい。安いサンプル品なら手が届くし、いろんなブランドを楽しめる」といった声が代表的だ。

 サンプル市場が広がったのは、新型コロナウイルスと関係がある。昨年のコロナ禍では化粧品業界も大打撃を受けた。売り上げを回復したいがイメージ的に商品の値下げは避けたい有名ブランドが選んだ手法が、サンプルを使った販促。新製品や人気シリーズのサンプルが多く流通した。

 大量のサンプルを売る小売店舗側は「日ごろから取引のある化粧品会社から入手している」と客に説明しているが、資生堂は中国メディアの取材に「サンプルは消費者に商品を体験してもらうことが目的であり、販売を許可することはありえない」と答え、ロレアルも「調色師やWOW COLOURなどは私たちの正規店ではない」と表明している。

 今年1月には、大量のサンプルを販売していた杭州市(Hangzhou)の小売店「ONLY WRITE」が当局の査察を受け、サンプルなど3000点を押収された。販売金額で20万元(約335万円)以上に及ぶが、合法的な仕入れを証明できず、「密輸」容疑で調査を受けている。

 サンプルが偽物の可能性すら指摘されている。中国のネットサイトでは、有名ブランドのパッケージや空きボトルだけが販売されている。化粧品会社の中には「有名ブランドと同じ素材の化粧品を提供できる。検査機関に持ち込んでも品質に違いはない」とセールスしている業者もいる。中国では、外資企業とライセンス契約している工場が余分に商品を製造して横流しする「本物と同じ偽物」も存在する。しかし、顔や肌に直接つける化粧品の偽物はどんな形であれ許されない。

 折しも中国政府は1月1日から「改正化粧品監督管理条例」を施行。品質の安全に対する企業の責任の明確化、違法行為に対する処罰の厳格化などを盛り込んだ。横行するサンプルビジネスに対し、どのようにメスが入るかが注目される。(c)東方新報/AFPBB News